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グリーンボンド等の年次報告・外部評価の重要性

2018年04月10日 黒田一賢


 3月初旬にルクセンブルク・グリーン取引所(Luxembourg Green Exchange、以下LGX)の担当者と意見交換する機会を得た。同取引所は2016年9月にルクセンブルク証券取引所で開設されたグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンド(以下、グリーンボンド等)に特化した上場市場である。グリーンボンドとは、気候変動緩和・水資源確保・生物多様性保全など、環境に好影響を及ぼす事業活動に資金使途を限定した債券のことである。ソーシャルボンドは福祉、教育、交通、住宅等の領域での社会課題解決型の活動のための資金使途を前提としている。最後にサステナビリティボンドは、グリーンボンド、ソーシャルボンド両方の特性を持つ債券である。

 LGXでは、業界の自主基準であるグリーンボンド原則、ソーシャルボンド原則に準拠した内容を上場審査基準に取り入れている。両原則は1)資金使途の要件定義、2)対象事業の評価選定手順、3)調達資金管理、4)年次報告の4原則とともに、外部評価として1)セカンドオピニオン、2)資金使途の検証、3)一連のプロセスの適正性を評価する認証、4)格付のいずれかを受けるというものである。

 冒頭の意見交換で特に印象的だったのは上場基準にも含まれている年次報告が、上場債券の全てで行われていることであった。もちろん上場基準に違反する発行債券は、上場を維持できないのだから当然と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、初の年次報告が発行されたのがわずか3年前の2015年であることを考えれば、やはり特筆すべきである。もちろん担当者はその質にばらつきがあることは認めている。しかし国際的な開発金融機関から未上場企業までさまざまな発行体がいる現状で、それぞれが年次報告公表の人的・金銭的リソースを確保しているのは市場の健全性を示す一つの証左と言えよう。健全性促進に実績のあるLGXの上場基準がEUハイレベル専門家グループ(High-Level Expert Group: HLEG)の最終提言にEUグリーンボンド基準(EU Green Bond Standards)として盛り込まれたのも当然と言える。

 日本国内の潜在的な発行体からは外部評価のコストや資金使途の社会からの批判等について懸念を耳にすることがある。しかし発行後の年次報告で説明を求められることを念頭に置けば、以上の懸念は払拭されるものと考える。債券投資では発行体の信用度が最重要だが、対象事業選定や事業から得られる効果は必ずしも既定の方法論があるわけではないため、投資家からの信頼は勝ち取るには外部評価が不可欠と言えよう。またグリーンボンド等の発行においては資金使途から生じる環境面・社会面の裨益が当然期待される。その報告に恣意性がないことを証明するためにはやはり外部評価が必要である。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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