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【次世代交通】
自動走行ラストマイルで町をよみがえらせる(第1回)自動運転のブレイクスルーに求められるもの

2018年01月16日 井上岳一


 2014年にGoogleが運転席のない自動運転の実験車両を発表して以来、先進各国を中心に、自動運転に対する取り組みが広がっている。
 わが国でも、2015年11月に安倍首相が「2020年までの完全自動運転(いわゆるレベル4)の実用化」を宣言したことをきっかけに、自動運転に対する取り組みが本格化した。翌2016年には、経済産業省と内閣府が自動運転の実証プロジェクトを立ち上げ、2017年度には国交省が道の駅で自動運転の実証を行う事業を開始した。2018年には、郊外ニュータウンを対象に自動運転の実証を行う計画を国交省が打ち出している。
 民間独自の取り組みも進んでいる。いち早く動いたのはDeNAで、ソフトバンクグループがそれに続いた。IT会社に比べて慎重さが目立った自動車会社も、トヨタ、日産を中心に、ここに来て急速に動き始めている。自動車会社の動きに遅れてはならじと、パナソニックやデンソーのようなサプライヤーも、自動運転に対する取り組みを加速させている。

 日本総研においても、2016年の経産省と内閣府それぞれの国家プロジェクトへの参画を皮切りに、自動運転に対する取り組みを本格化させてきた。また、それらとは別に民間のコンソーシアムとして始まった自動運転に対する取り組みは、昨年11月には、神戸市の郊外ニュータウンでサービス実証を行うまでになった。
 インキュベーションを標榜する創発戦略センターでは、コンサルティングでも調査でもなく、自動運転技術を活用した交通サービスを自ら立ち上げることを目指している。自動運転のようなまだ世に出ていない技術を実装するには、自ら事業を立ち上げるというスタンスでないと突破できないものがあるからだ。他のシンクタンクやコンサルティング会社とは一線を画す、当社ならではの取り組み姿勢だと自負している。
 とは言え、自動車会社のように自動車をつくれるわけでも、IT会社のように分厚いユーザープラットフォームや通信技術を持つわけでもない我々に何ができるのか。それは常に自問自答してきた問いである。分をわきまえずに突っ走ったからこその失敗もある。試行錯誤の連続だったが、そういう中で、自動車会社でもIT会社でもないからこそ取れるポジションがあるのだということがおぼろげながらもわかってきた。
 それは、徹底してユーザーの側に立つポジションだ。ユーザーに寄り添い、ユーザーの視点でサービスを設計し、最適な技術とシステムを導入する。そういう立ち位置である。

 自動運転は、現時点では、「あると便利かもしれないが、なくても良いもの」くらいにしか思われていない技術だ。交通不便地域ではマイカーに代わる交通手段が切望されているのは事実だ。だが、それが自動運転に直結するわけではない。他にも選択肢がある中で、自動運転ならば安上がりだからと、提供側の目線で期待が集まっているにすぎない。
 そういう状態で自動運転を受け入れられるものにするには、徹底したユーザー目線でデザインや使い勝手をブラッシュアップしていくことが重要になる。iPhoneの登場前、スマートフォンは、「あると便利かもしれないが、なくても良いもの」と捉えられていた。だが、iPhoneの登場によってそれは一変した。iPhoneの、理屈抜きに欲しいと思わせるデザインと使い心地、それに、アプリをインストールすることによって、好きにカスタマイズできる拡張性がユーザーの心をわしづかみにしたからだ。
 ジョブズの天才性は、ユーザー目線で突き詰めたビジョンを描く構想力と、その実現に向け、関係者達を巻き込み、不可能を可能にさせてしまう推進力とにあった。自動運転のブレイクスルーに求められているのも同じものだと思う。技術や法律面の課題をクリアすることはもちろんだが、ユーザー目線であるべきビジョンを描き、その実現に向けて物事を動かしていく構想力と推進力が求められているのである。
 ジョブズに比すべくもないが、われわれ日本総研が目指すのもそれである。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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