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【次世代農業】
農業ビジネスを成功に導く10のヒント~有望な新規事業の種はどこに埋まっているのか?~ 最終回

2017年04月11日 三輪泰史


 本コラムでは、「農業ビジネスを成功に導く10のヒント」と題し、さまざまな視点から「儲かる農業」の実現に資する話題提供を行ってきました。今回がその最終回となります。第11回目は、「農業ビジネスにおける人材戦略」に焦点を当てます。

 日本の農業が苦戦してきた要因として、「ビジネス」の観点が欠如していた点が挙げられます。農業では、農産物の栽培に加え、企画、営業、研究開発、経理、人材育成等の実務をこなす必要があります。これを一人の農業者でカバーするのは至難の業です。農業を儲かるビジネスへと変えるためには、これらの経営スキルを分担できる体制の構築が必要なのです。

 そのような中、農業への注目の高まりを受け、能力の高い若手、中堅層が数多く農業分野に飛び込んでいます。栽培だけでなく、大学や前職での専門性を活かし、営業・企画・技術開発などの専門家として活躍している方も少なくありません。多様な人材が活躍している農業法人の中には、目覚ましい成長を遂げているケースも少なくありません。

 マーケティング能力を例に取りましょう。近年、農産物流通の構造が変わりつつあり、直売所、インターネット販売など、消費者と直結する流通(以下、ダイレクト流通)が存在感を増しています。ダイレクト流通では消費者に農産物の価値を直接訴求できるため単価を高めやすく、また中間マージンも低く抑えることができます。また、SNSの普及により、農家と消費者が双方向にコミュニケーションを取ることが可能になりました。広告宣伝効果は、投じた費用の多寡ではなく、情報の内容とアイデアで決まるようになっています。ダイレクト流通では、農業者が消費者ニーズを掘り起こして、新たな商品を企画していくというマーケティング活動により、十分な収益を上げることが可能となります。

 マーケティングに必要な能力・スキルがこれだけ多岐にわたると、もはやマーケティングに関する理論と手法を体系的に習得した人材でなければ対応が難しいと言えます。今後、大学でマーケティングを学んだ人材や他産業で経験を積んだ人材にとって、農業法人も自らの能力・スキルを発揮できる場となるでしょう。
ただし忘れてはいけないのが、腕の立つ農業者が豊富なノウハウを基に丹精込めて育てた、消費者の心に響く農産物がなければ、マーケティングも事業計画も机上の空論に過ぎないという点です。生産、企画、営業、経営管理等のさまざまな実務を担う人材が、相互尊敬のもとで協力することが、組織としての活力源となるのです。

 本コラムはこれで最終回となりますが、農業分野の新たな連載を計画しています。日本農業は現在、大きな転換点に差し掛かり、変革のスピードが加速しつつあります。これからもタイムリーな情報提供を続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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