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【次世代農業】
農業ビジネスを成功に導く10のヒント ~有望な新規事業の種はどこに埋まっているのか?~ 第6回 ヒント(5)日本農業を変える農業IoT

2016年10月25日 三輪泰史


 日本農業は長期にわたる苦境にあえいでいます。農業産出額は8兆円台にまで低迷、高齢化や跡継ぎ不在により農業就業人口は200万人を割り、就業者の平均年齢は約66歳になっている状況です。耕作放棄地は拡大の一途をたどり、40万ヘクタールを超えるに至っています。

 ただ、このような状況下においても、逆転の発想でピンチをチャンスに変えることは可能だと考えています。一般的にはネガティブな現象として捉えられる「農業就業人口の減少」は、見方を変えれば「一人当たりの農地面積の拡大」や「一人当たりのマーケット規模の拡大」となります。離農に伴って発生する余剰農地を耕作放棄地にするのではなく、意欲的な農業生産者に集約することができれば、日本農業の長年の課題である一人当たり農地面積の狭さを解消することが可能です。

 ただし、単に農地を集約して規模拡大するだけでは、「儲かる農業」は実現しません。現在の栽培方法では北海道の畑作や新潟の大規模稲作等の一部事例を除いて、少人数で広い農地をきちんと管理・活用することは簡単ではないからです。農業経営の統計データを紐解くと、例えば露地での野菜栽培の場合、農地の規模をn倍に拡大しても、粗収益(売り上げ)はn倍にならず、面積当たりの粗収益が低下していることが分かります。それは、面積が広がると、単価が低く手間がかからない作物に切り替えたり、作物の管理水準が低下したりすることによって、品質や単収(単位面積当たりの収量)が下がってしまうからです。

 このような課題への解決策として、IoT(モノのインターネット)の農業分野での活用に注目が集まっています。農林水産省等はICT、IoTを駆使した農業を「スマート農業」と名づけ、農業の成長産業化の起爆剤として期待しています。IoTの力を借りて、少人数でも広い面積で精度の高い農作業が行える、自動走行トラクター、農業ロボット、農業用ドローン、環境制御技術等の研究開発が進められ、2020年に向け次々と商品化が見込まれています。近年の農業参入や農業法人化の流れとあいまって、今後10年で日本農業の姿は大きく変わっていくと思われます。

 ただし、現状のスマート農業は万能ではなく、自動運転農機では、日本農業全体を儲かる農業に変えることは困難です。まとまった農地が確保できる地域では自動運転農機が優れた効果を発揮しますが、日本特有の分散圃場では効率が大きく低下します。IoTやICTを活用して農業従事者みなが儲かる農業を営めるようにするには、小規模分散圃場というスマート農業の弱点を補完する、自律型多機能農業ロボット等の新たな技術が必要となります。このテーマについては、次回で改めて掘り下げることとします。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。