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Business & Economic Review 2012年5月号

【特集 アジア経済の現状と新たなビジネス展開】
中国におけるスマートシティ建設の現状とグローバル企業のアプローチ

2012年04月25日 王婷


要約

スマートシティ建設が中国でブームとなっている。

金融危機後の2009年、中国政府は中国版グリーンニューディール戦略の一環として、環境、再生可能エネルギー、エコカーなどの産業育成を打ち出した。そのなかで、北京、上海、南京、無錫、瀋陽など22の都市が先駆けて知恵都市構想を立ち上げ、「物連網」技術を中心に都市の建設、運営、管理をスマート化しようと動き出した。

さらに、2011年からスタートした12次5カ年計画では、「都市化の強化、持続的発展、低炭素経済、内需拡大」などの政策目標が掲げられている。低炭素経済と都市化を推進する一環として、国家発展改革委員会の主導で、2011年8月に5省8市で低炭素都市モデル事業が立ち上がった。最新技術を駆使してエネルギー効率を高め、省資源化を徹底した環境配慮、低炭素な街づくりを行う、というコンセプトである。

一方、中国では「スマートシティ」に関する明確な定義がないことから、上記の知恵都市を同義のものと捉えることもできるし、低炭素都市を同様に捉えることもある。実際、中国の環境都市、低炭素都市、生態都市建設のプロジェクトは両者のコンセプトが混在するケースが多く、都市建設の現場では新しい技術やアイデアが積極的に取り入れられていることから上述した二つの都市形態を中国におけるスマートシティと考えることは可能である。したがって、本稿では、両者を共に中国のスマートシティと捉えることとして論を進める。

中国のスマートシティの市場規模は巨大である。中国のある研究機関の試算によると、2020年までに予想される投資額は数百兆元に上るという。また、国家電網が主導するスマートグリッド事業だけでも100億ドルの規模があるといわれている。これだけの巨大なマーケットであるから、中国国内あるいは海外の企業が、この手、あの手を尽くして食い込もうとしている。

このマーケットでは、上流のコンセプトデザインやキーコンポーネント提供など、いわゆるスマートシティの核心となる分野について、国内企業と比べ、グローバル企業の活躍ぶりが目立つ。具体的にはIBM、INTEL、シーメンス、GE、ABBなどである。これらの企業は、マーケットへのアプローチと並行して、M&Aや現地企業との提携などにより事業機会の拡大を図っている。

本稿では、中国におけるスマートシティ建設の現状とグローバル企業の中国での活躍ぶりを整理する。そのうえで、グローバル企業との比較において、日本企業の強みを抽出し、さらに、日本企業の参入方法を明示することを目指す。
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