要約
- 関西経済は、2011年夏場以降停滞色が強まっている。鉱工業生産は、全国的には震災の影響が一巡しかけた7月から減少基調に転じたが、この主因は、中国、アジア向け輸出の減速である。とりわけ中国以外のアジア向けは直近で2010年のボトムを割り込み減速感が強い。アジア主要国・地域の経済情勢は、中国が旺盛な内需を背景に高めの成長を続けているものの、外需依存度の強いNIEsを中心に成長率が鈍化傾向にある。
海外景気の減速を受けて、企業部門は減益となり、設備投資も先送り姿勢が強まっている。一方、家計部門においては、雇用・所得環境の持ち直しを背景に消費が底堅く推移しており、企業部門の不振が波及する動きは今のところ限定的であるが、製造業の所定外労働時間に縮減の動きがみられるなど、先行き楽観視は出来ない。 - 関西経済の見通しの前提として、わが国の景気を展望すると、外需の牽引力低下、生産拠点の海外シフト、などを背景に2012年度いっぱいは低めの成長にとどまる見通しである。もっとも、復興需要の顕在化や個人消費の持ち直しなども期待できるため、景気の腰折れは回避可能とみられる。この間、世界経済は減速傾向が続く。アメリカや中国は底堅さがうかがえるものの、欧州が停滞するほか、アジアNIEsやASEAN主要国も2011年並みの成長にとどまる見込みである。
関西経済は、アジアへの輸出ウエートが高く、アジア経済の変動の影響を強く受ける。輸入についても、韓国、中国の輸出ドライブにさらされやすい体質となっている。このもとで円高や電力不足で企業の海外シフトが加速しており、2012年度は関西にとって「外需逆風年」となる。貿易収支は2012年度半ば以降赤字が定着する公算が大きい。電力不足は、2012年冬場は乗り切れるものの、夏場は厳しい節電努力が不可避である。大幅な節電が企業活動の制約要因になる可能性が大きい。
2012年度の関西経済は、①輸出伸び悩み・輸入増加のもとでの外需低迷、②電力供給制約に伴う経済活動の不活発化、などによって停滞色の強い展開になる見通しである。実質成長率は0.4%と、マイナス成長は回避するものの失速に近い状態に陥る見込みである。 - 関西経済はアジアの成長を取り込みやすいという点で中長期的にはポテンシャルが高い。ポテンシャルを活かすためには、企業の海外シフトが避けられないなか、新規産業の創出が課題となる。関西広域連合設立1年を経て、各府県が協調してフロンティアを切り拓くことが不可欠である。