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Business & Economic Review 2009年4月号

【SPECIAL REPORT】
日本版グリーン・ニューディール政策の断行を-経済対策は構造変化に即した成長戦略が鍵

2009年03月25日 藤井英彦



目次

  1. 深刻化する景気悪化

  2. わが国経済・産業の現状

  3. 構造変化する内外情勢
    (1)原油の需給動向
    (2)一次産品の価格動向

  4. 成長戦略としての経済対策

要約
1.深刻化する景気悪化

輸出の大幅な減少を主因に、2008年秋以降、わが国経済は急速かつ深刻な景気悪化に陥った。しかし、震源地のアメリカ経済では未だ激震が収まらない。まず金融危機についてみると、2月末、アメリカ連邦政府は同国最大の金融機関シティグループについて保有する優先株の一部を普通株に転換すると発表した。危機克服に向け一段と踏み込んだ取り組みに出たといえよう。

一方、実体経済についても、信用収縮に伴い景気悪化が深刻化するなか、新オバマ政権の発足後直ちに7,870億ドルに上る景気対策が打ち出された。もっとも、同対策は単年でなく今後2年の計画である。仮に景気対策のすべてが真
水であり、最終需要に直結するとしても、年間ベースに直せばGDPの2.8%に過ぎない。それに対して、2月末に発表された2008年10〜12月期のアメリカ実質GDPは前期比年率▲6.2%のマイナス成長であり、すでに大幅なGDPギャップが生じていることが明白となった。金融危機と実体経済悪化のスパイラル不況が本格化するなか、GDPギャップの一部を埋め合わせるだけの景気対策ではアメリカ経済の早期立ち直りは期待薄である。

翻ってわが国経済では、近年、輸出依存体質が一段と強まってきただけに、さらに深刻な打撃に直撃される懸念が大きい。すでにわが国でも2008年10〜12月期の実質GDPが前期比年率▲12.7%と大幅なマイナス成長に陥っており、2009年のマイナス成長は不可避な情勢である。現在、打ち出されている2兆円規模の定額給付金をはじめとする経済対策では、急速な景気悪化に歯止めを掛けるという観点からみても不十分であり、強力な追加対策が焦眉の急である。

しかし、わが国経済が輸出依存体質の強まりやサービス化の進行など、構造変化を遂げてきたなか、従来型の経済対策では限定的かつ一時的な景気浮揚効果しか期待できない。一方、わが国財政をみれば、国、地方ともに極めて厳し
い情況に陥っている。加えて、金融システム危機が深刻化するなか、今後短期間の間に欧米経済が持ち直してわが国の輸出が増勢に転じる公算も小さいなど、わが国経済を巡る情勢も従来とは大きく異なる。

これらを踏まえてみれば、経済対策の効果を最大限引き出し、わが国経済が現下の危機から脱出するには、内外の情勢や構造変化に即した成長戦略の断行が不可欠である。そこで本稿では、わが国の現状ならびにわが国経済を取り巻
く内外情勢を整理したうえで、今後、採るべき経済対策の骨子について整理してみた。
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