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【次世代交通】
第7回 地域活性化を担う「フェライン」の導入に向けて

2016年04月12日 木通秀樹


 地域活性化のためには、企業誘致や新事業立ち上げによる地域経済の活性化だけでなく、地域住民の活発な交流を行う等の地域コミュニティの活性化が欠かせない。地域の人々の交流を起点として消費を拡大しなければ、持続的な活力に必要となる域内経済循環を実現できないからだ。現在、国内では活発な交流を推進する取り組みが様々な地域で検討されているが、必ずしも十分な成果は得られていない。一方、世界を見渡せば、活発な交流を推進する取り組みのヒントは少なからず存在し、わが国への導入の可能性もある。

 そのひとつがドイツなど欧州で浸透しているフェラインという仕組みである。フェラインとは、ドイツ語で「協会」、「同好会」、「NPO(非営利法人)」などを意味する。有名なのはサッカーチームだ。日本の選手が移籍するなどで知られることになったVVVフェンロ、VfBシュツットガルトなどのサッカーチームは、このフェラインで構成されている。Vはフェライン(Verein)のVなのだ。ドイツのサッカーチームは、こうした市民団体によって作られているものが少なくない。その分、応援が盛り上がることでも有名だ。この他、趣味、地域保護、社会福祉、文化、芸術など、ドイツ全体に50万以上のフェラインがあると言われる。日本のNPOも増えてきたが、まだ5万程度である。フェラインは、ワイン好きが集まって作るような簡単なものから、数千人を越えるような大規模なものまである。その特徴は、地域住民が地域への貢献として複数のフェラインに属することが推奨されていることだ。個人が様々なフェラインに属し、人間関係の交差、拡大が生まれることで、地域社会の中に複数の役割を得て精神的な安定を確保し、活発に行動することで生活を豊にしていくという伝統が育まれているのだ。
 ドイツでは何かしらのスポーツのフェラインに所属する人が2,000万人を越えており、ドイツ人口の三分の一弱に達する。これだけ多くの人が、プロスポーツの観戦をしたり、自らスポーツしたりして交流を深めているのだ。この効果は、日本のJリーグに比べて、ドイツのブンデスリーガが3倍近い観客動員数を獲得していることにも現れている。観客動員数が多ければ、それだけ多くの人が外で飲食を行うことになり、地域も賑わうことになる。

 地域活性化に効果があるフェラインを日本の地方都市に導入するためには、人々が交流を深める「場」作りを進めるとともに、SNS等のコミュニケーション技術と物理的に人を動かすIoTを用いたフェライン形成支援システム(以下、「本システム」と呼ぶ)を構築することを提案したい。ドイツは長い歴史の中で、コミュニケーションや行動の意思決定など、人が集うための技術を培ってきた。しかし、ドイツ人に比べて社交的ではないと言われる日本人が集まるには、感情的にも物理的にも背中を押して人を動かす仕組みが求められる。こうした幹事役を担うのが本システムである。本システムを活用して、人を動かす「移動支援サービス」を提供することができれば、日本でもフェラインを定着することができるのではないかと考える。

 従来、「移動支援サービス」というと先進的な地域交通システムを想定することが多かった。確かに、交通手段が消失したような地域であれば新たな地域交通システムも必要である。しかし、人々が交流を深めるためには、コミュニケーションや行動の意思決定をその人任せにして移動手段を提供するだけでは十分ではない。様々なコミュニティに属する人と、それを支援する人や事業者等の各種の情報のプラットフォームを構築し、移動の支援と手段の提供を行う本システムを実現することが有効であろう。地域活性化を担う「日本版フェライン」導入をそうした道筋で追求していきたい。

<バックナンバー>

「第1回 ライドシェアの解禁はなるか?(その1)」
「第2回 ライドシェアの解禁はなるか?(その2)」
「第3回 わが国のコネクティッドカー推進にむけた1つの手法」
「第4回 ワンウェイ方式のカーシェアリングは、なぜ日本で普及していないのか 」
「第5回 超小型モビリティは成長市場になるか(その1) 」
「第6回 超小型モビリティは成長市場になるか(その2) 」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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