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オピニオン

【次世代交通】
第4回 ワンウェイ方式のカーシェアリングは、なぜ日本で普及していないのか

2016年02月23日 泰平苑子


 街中で「カーシェアリング」の看板を見かけることが多くなった。カーシェアリング事業には、車の借受場所と返却場所が同じ「ラウンドトリップ方式」と車の借受場所と返却場所が異なる「ワンウェイ方式(乗り捨て方式)」とがあるが、日本のカーシェアリング事業の多くは、ラウンドトリップ方式を採用している。他方、近年、海外で注目されているのが、ワンウェイ方式のカーシェア事業である。本稿では、ワンウェイ方式のカーシェアリングは、なぜ日本で普及しないのかを考えてみたい。

 ダイムラーが欧米を中心に積極展開し、成功しているカーシェアリング事業Car2Goはワンウェイ方式の代表だ。Car2Goは、許可された域内の路上であればどこでも乗り捨て可能なフリーポート型で、ワンウェイ方式の中でも極めて利便性が高い。しかし、路上駐車が認められていない国・都市では、フリーポート型は実施できないため、Car2Goの展開は、ドイツ・イタリア・オランダ・アメリカなど路上駐車が認められている国か、条例等によってフリーポート型を承認している自治体の区域内かに限られる。日本の場合、路上駐車できるような道路は極めて限られるため、フリーポート型は実現不可能だ。このことがまず、ワンウェイ方式のカーシェアリングが日本で普及していない理由である。

 他にも、ワンウェイ方式を阻む法律上の制約がある。日本でカーシェアリング事業を行う場合、法律上はレンタカー事業と位置づけられる。レンタカー事業者としての登録には、貸渡しのための有人の営業所を置いた上で(道路運送法)、「使用の本拠の位置」を定める必要があり(道路運送車両法)、有人の営業事務所(配置事務所)の設置が義務づけられている。また、車両の保管場所は、「使用の本拠の位置」から2km以内(車庫法)であることが求められる。
 そもそも、こうした法律の存在から車両が登録された車庫以外に返却されるワンウェイ方式は許容されてこなかったのである。もっとも、2014年の国土交通省の通達により、無人の借受場所であってもITの活用等により利用状況や整備状況を的確に把握できるなら、ワンウェイ方式を採用できるようになる規制緩和が実現した。この通達により、オリックス自動車とメルセデス・ベンツ日本、駐車場管制システムのアマノは、国内初のワンウェイ方式のカーシェアリング「smaco(スマコ)」を開始したが、2015年9月末にはこのサービスの運用を終了してしまう。大手カーシェアリング事業者はワンウェイ方式を実証に留め、今でもステーション固定型のラウンド方式を採用している。

 こうなると、法律の存在以外に、ワンウェイ方式が普及しない日本特有の理由を考えざるを得ない。そうした理由として、次の3つが考えられる。
 まず、ワンウェイ方式を採用するには車両以上の駐車場数の確保が必要であり、追加の駐車場費用がかかるという点があげられる。特にコインパーキング事業も行う事業者は、稼働率の下がるカーシェアリングに車両以上の駐車場を割くことに二の足を踏む。
 次にワンウェイ方式では、目的地になりやすい駐車場と出発地になりやすい駐車場に偏りが生じ、稼働率を上げるために車両の再配置が必要という問題もある。配車のための人件費や車両配備のシステム設計もコスト負担になる。
 最後に、日本は欧米の自動車社会と異なり、公共交通機関が発達しており、バスや電車が地域住民の日常の足になっている現状がある。カーシェアリングへのニーズが顕在化するためには、鉄道やバスの本数も少ない地域に駐車場を設置するなど、地域公共交通機関の課題を踏まえた、きめ細かい配慮とサービス展開が必要といえる。

 では、日本において、ワンウェイ方式の事例を全く見つけることが出来ないのかといえばそうでもない。ワンウェイ方式を用いたカーシェアリングの実証事例として、豊田市の「Ha:mo」や安城市の「き~☆モビ」などがある。ここでは、地元住民の足として通勤や通学、通院や買い物に利用されている。ポイントは限定された域内において、十分な車両数と駐車場数を整備することのようだ。レンタカー事業やコインパーキング事業の延長として捉えてしまうと採算の観点から実現に至らないシステムでも、これをコミュニティのインフラもしくは公共財と捉えれば、継続の可能性があることをこれらの事例は物語っている。手軽で便利な移動サービスであるはずのワンウェイ方式をどうしたら実現できるのか、その検討を今後も続けていきたい。

<バックナンバー>

「第1回 ライドシェアの解禁はなるか?(その1)」
「第2回 ライドシェアの解禁はなるか?(その2)」
「第3回 わが国のコネクティッドカー推進にむけた1つの手法」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。