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【次世代交通】
第6回 超小型モビリティは成長市場になるか(その2)

2016年03月22日 程塚正史


 ハードウェアとしての超小型モビリティ(以下、超モビと呼ぶ)は、前稿のとおり、地域内移動のニーズに特化した機能を備えており、想定ターゲットからの受入れ可能性も高い。ただ一方で、今後の制度検討のためには、超モビの地域内シェアビジネスのモデル確立が必要とされているのも事実だ。ここでは、超モビのような車両の、地域内シェアビジネスの事業性確保のための道筋について検討していきたい。

 まず、超モビのシェアビジネスを論じる以前に、そもそも一般のカーシェアビジネス自体、事業性を確保するのは容易ではないことを確認しなければならない。最大手のパーク24(ブランド名「タイムズ」)が試行錯誤の末の2014年、単年度黒字をようやく達成したと言われている。そのような環境下で、超モビのシェアビジネスが従来のカーシェアと真っ向から張り合うのは得策ではない。超モビには超モビの良さを生かしたビジネスの仕組みが必要である。
 超モビならではの強みとは何かというと、冒頭の通り地域内移動ニーズへの特化から生まれる。超モビはさまざまな用途に使えるわけではないが、スーパーや病院など「ちょっとそこまで」の足としてなら、コスト面でも機能面でも優れている。
超モビのシェアビジネスを成り立たせるには、従来のカーシェアの延長ではなく、ハードウェアの強みを生かしつつ、地域の課題解決を前面に、地域密着型の仕組みづくりが有効ではないだろうか。地域密着型とは、人と人をつなぐという視点、人と店をつなぐという視点、人とコミュニティをつなぐという視点を意味する。以下では、3つの視点それぞれの具体的なあり方について考えてみたい。
 まず一つ目は、人と店をつなぐという視点、つまり目的地となる小売店舗と超モビのシェアビジネスの連携である。超モビによる行き先は、前稿のとおり一里圏内の店舗が主である。そこでその範囲内の店舗側には特別の駐車枠を設けてもらったり、シェアの会員向けに店舗情報を送ったりすることが考えられる。実際に当社が関わった実証実験では、超モビのための駐車枠を設けた店舗では買い物をする人が増えたという結果がある。超モビの少ない現状において、店舗側がこのような認識を持っていることはまれかもしれないが、シェアビジネス側は、積極的に店舗の巻き込みを進めるべきである。
 二つ目は、人と人をつなぐ視点。つまりエンドユーザーとなる住民どうしのつながりの強化、あるいは住民の参加である。地域での超モビの共有となると、ある程度顔見知りによる共同利用が想定される。例えばマンションで一台とか、ひとまとまりの宅地で一台ということになる。そこで車両の管理を、住民に委託する試みをしてもいい。従来のカーシェアビジネスでは考えにくいことだが、地域起点の事業であるため住民の協力を得ることも重要な成功要因になるだろう。特にワンウェイ型など配車コストがかかる事業であれば、その手間を利用者に分かち合ってもらう形態も考え得る。
 三つ目は、人とコミュニティの関係であるが、ここでは特に自治体の関与を指摘したい。超モビは一里圏内の移動を活性化し、域内経済の循環を促す効果を持つ。従来、外出をためらっていた高齢者が超モビによって外出機会が増えるとも言われる。超モビ活用に対して支援策を講じる根拠はあり得るのではなかろうか。単純な車両取得のための補助金や運営費補助ではなく、超モビによる外出先と想定される、公民館でのサービス利用や市民プール利用のクーポンの提供、健康診断の優先権の提供などを自治体が超モビ利用者に行うのだ。超モビ支援によって人々の移動を促し、住民の健康増進と経済循環を同時に高めるなど、総合的な行政目的の達成にも貢献できよう。

 超モビは、今後、成長市場になり得ると考えられる。地域内移動を増やし、域内経済循環を活性化する可能性を持っている。一方、普及に向けた地域内シェアビジネスのモデル確立が必要である。それは現在、各地で試行錯誤の段階だが、新たな市場形成に向けた知見の共有を図っていくことが肝要であり、微力ながら、そのための貢献を果たしていきたい。

<バックナンバー>

「第1回 ライドシェアの解禁はなるか?(その1)」
「第2回 ライドシェアの解禁はなるか?(その2)」
「第3回 わが国のコネクティッドカー推進にむけた1つの手法」
「第4回 ワンウェイ方式のカーシェアリングは、なぜ日本で普及していないのか 」
「第5回 超小型モビリティは成長市場になるか(その1) 」


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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