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日本総研ニュースレター 2015年11月号

本社組織の強化がコーポレートガバナンス実現の本道

2015年11月02日 山田英司


コーポレートガバナンス・コードは機能できるのか
 2015年6月に「コーポレートガバナンス・コード」が施行された。背景としては、安倍政権の成長戦略では、ガバナンス強化が日本企業の成長のための重要な柱の一つと位置づけられていることにある。このコーポレートガバナンス・コードの中では、株主への説明責任の強化や従来の内部統制の充実に加え、社外取締役等の積極的活用など、企業経営に「外部の目」を入れることが謳われている。これは内部統制によって一定の規律を保ちつつ、積極的に内部留保を投資に振り向ける仕組みを充実させることで、最終的に企業価値を向上させるという狙いに根差している。
 ところで、今回の取り組みで、ガバナンスの強化は本当に実現できるのであろうか。実は、ガバナンス強化については、2002年の商法改正を皮切りに、その後も会社法の改正を重ねるなどして都度推進されてきたが、必ずしも成功しているとは言えない。近年も不適切な会計処理やコンプライアンス違反などによって企業価値を大きく毀損する事案がいくつも発生しており、その中には、「コーポレートガバナンスの優等生」と評価されていた企業も含まれる。これらを考えると、今回も制度を単になぞるだけでは、この10年以上の歴史を繰り返すだけの結果に終わる恐れがある。
 これらの不首尾については、その要因を取締役会や監査役会、そして各種の委員会といった会社機関の構成員の資質や行動だけに求めることは適切ではない。根本的な要因については、経営判断に欠かせない肝心の経営情報が会社機関に行き渡らず、結果的にガバナンス活動が形骸化してしまっていることにある。

「外部の眼」を活かすのは適切な経営情報の提供
 特に近年では、事業の多角化やグローバル化への対応、M&A・アライアンスの活発化など、経営判断を行うために必要な情報量が飛躍的に増加している。コーポレートガバナンス・コードに則り「外部の眼」から経営者や事業責任者に対する適切な牽制と前向きな助言を得てガバナンスを強化するためには、この「外部の眼」に対してこうした多くの経営情報を適切に提供し続けることが不可欠となる。しかし、この情報提供を担う本社組織は不況時からのスリム化の影響もあり、時代の変化に応じた強化がなされていないため、これらの情報を適切に整理して会社機関に提供するという機能を十分に果たしにくくなっていることも事実である。
 また、多くの企業では経営会議など、取締役会の下部構造に権限委譲を行い機動的に意思決定する組織が存在する。さらに近年では、持株会社制度を採用する企業も増加しており、その場合、傘下の事業会社にそれぞれ権限委譲が行われ、それぞれが意思決定組織を有する。このような状況では、意思決定のプロセスが一層見えにくくなり、「外部の眼」はもちろん、会社機関自体に適切な情報が入りにくくなり、ガバナンスの形骸化を招きかねない。これらを避けるため、本社組織が主体となり取締役会や監査役会や各種委員会、経営会議などの様々な組織に対して、必要な情報を供給するなど、適切な運営をサポートする必要がある。

本質は、本社組織を中心とした経営品質の強化
 ただし、それらを実行するには、本社組織により多くの人員とコストを割く必要があるため、本格的に取り組むことを躊躇する企業も少なくない。しかし、今回のコーポレートガバナンス・コードの背景には、特に日本企業の資本効率を高めることを念頭においてまとめられたものである。そのため、単なる制度対応ではなく、これまで置き去りにしていた、会社機関のサポートをより強固なものとする本社組織の機能強化に真正面に取り組むべきだ。
 具体的には、本社組織が中心となって、適切に経営情報を吸い上げた後に、会社機関に対して適切な情報提供を行う。そして、健全な議論に基づいたマネジメントの方向性を必要な形で関係各所にフィードバックする。このような情報サイクルを本社組織が確立し運営することが、一部の経営者や事業部門による情報の抱え込みと独断専行を抑え込み、それに代えて健全な成長戦略を議論する素地を会社機関にもたらす。これらの一見あたりまえで地味にみえる取り組みこそが、10年以上かけてもできなかったガバナンスを強化し、経営品質を高度化させる本道と考える。



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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