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再生可能エネルギーのグローバル流通の必要性

2016年01月12日 木通秀樹


 COP21が昨年末に開催され、世界196の国と地域が温室効果ガスの削減目標を設定するパリ協定の合意を見た。日本は、2009年には、「2050年 温室効果ガス80%削減」の目標を設定し、2014年には米国も80%削減の目標を設定するなど、2050年に向けて、先進各国で高い目標が掲げられている。一方、従来の削減目標だけでは、気温は2100年までに2.7℃上昇するという報告もあり、温暖化を食い止めるには、日本が他の先進国とともに公約している80%の削減は必達目標と言える。

 2050年に温室効果ガス80%削減を達成するためには、運輸部門などでエネルギー消費の大幅な削減が求められる。ところが、需要自体の大幅な削減は、人々の生活を制限することになり、経済発展を停滞させる要因ともなりかねず、過度に強要することは難しい。そこで、エネルギー供給側面において再生可能エネルギーによる温室効果ガスの削減が期待されている。
 しかし、わが国では国土構造の制約で再生可能エネルギー獲得量には限界がある。経済的に妥当性がある国内の太陽光発電の設置可能面積は2,000平方キロメートル程度であり、最大限、再生可能エネルギー発電施設を整備してもエネルギー供給量が不足することは避けられない。

 実は、こうした設置面積が原因で再生可能エネルギー供給可能量が不足するのは、日本やシンガポールなどアジアの数カ国、地域しかなく、世界的には供給が潜在的には過多だ。こうした、再生可能エネルギーの偏在を考慮すれば、自国内の生産にこだわらずに、オーストラリアなどの余剰地域から再生可能エネルギーを調達することが有効なのである。
 また、再生可能エネルギーをグローバルに流通させる際には、用地の利用効率、輸送特性などに優れる、太陽光、風力によって生成される水素燃料が有効である。こうした再生可能エネルギー由来の水素燃料を海外から調達することで、運輸などの動力や熱を必要とする需要に対して、エネルギーの多様性と効率性を確保することが可能となる。

 とりわけ、再生可能エネルギーのグローバル流通によって不足するエネルギーを確保する方策は、人口当たりの再生可能エネルギー生成率の高い国々と低い国々が混在するアジア圏で効果的だといえる。2050年の温室効果ガス80%削減に向けたエネルギー転換を進めるに、再生可能エネルギーの流通ネットワークを構築し、長期契約による安定確保の仕組みを導入する好機ではないか。新たな政策構築が求められる。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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