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【次世代交通】
ライドシェアの解禁はなるか?(その1)

2016年01月12日 井上岳一


 2015年10月20日に開催された第16回国家戦略特区諮問会議において、安倍総理が、「過疎地等での観光客の交通手段として、自家用自動車の活用を拡大する」と発言したことで、いよいよマイカーを利用した有償での乗り合いサービス(=ライドシェア)が日本でも解禁されるのではないかと注目を集めている。

 ライドシェアは、世界では急成長している分野だ。しかし、日本では、マイカーを利用した旅客行為は、白タク行為として道路運送法によって禁止されている。この解禁を求めて政府に働きかけているのが、楽天の三木谷氏率いる新経済連盟で、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略」では、ライドシェアとは明記されていないものの、「シェアリングエコノミーなどの新たな市場の活性化のために必要な法的措置を講ずる」と謳われた。10月20日の総理発言はこれを踏まえてのものだが、事前の調整を了した上での発言ではなかったため、道路運送法を所管する国交省側は困惑を深めている。

 総理が「過疎地等」と言ったのは、公共交通の減少に悩む京丹後市が過疎地等に限定してのライドシェアの解禁を求めていたからだが、総理発言を受けて、既に国家戦略特区に認定されている養父市、仙北市でも、ライドシェア解禁に向けての動きが始まっている。

 実は、京丹後市の背後には、世界中でライドシェアを展開する米国Uber Technologiesの存在がある。Uber社は、2015年3月、福岡でライドシェアの実証実験「みんなのUber」を行ったところ、「白タク」に該当するとして運輸当局から中止命令を受けている。そこで、タクシー事業者のいる都市部での展開が難しいと判断したUber社は、公共交通が十分に存在せず、移動手段の多様化が求められている過疎地に狙いを定め、そこを突破口にして、ライドシェアに対する認知と理解を広げる戦略に転換したのである。

 もっとも、過疎地等の公共交通空白地帯においては、現状でも登録制で白タク行為(自家用有償旅客)が行えることになっている。ただ、登録に当たっては、関係するステークホルダーを交えた運営協議会を設置し、そこで合意形成できることが条件だ。運営協議会のメンバーには、地域の交通事業者や運転手の労働組合を入れることが義務付けられているため、よほど不便な地域でない限り、合意形成に至るのは容易ではない。

 特区の諮問会議で検討されている規制緩和案は、特区に限り、運営協議会による合意を不要とするというものだ。運営協議会が不要ならば、交通事業者が反対することはないから、白タク行為がしやすくなる。ここがミソで、過疎地でライドシェアの有用性を認められれば、過疎地ではない特区にも広げてゆける構造になっている。つまり、過疎地だからと認めてしまえば、ライドシェアを都市部にも展開できる道が開けてしまうわけで、そうなると道路交通法の体系に穴が開いてしまうから、国交省にしてみれば、いくら総理の発言だとは言え、慎重に対応せざるを得ないという事情があるのだ。

 果たしてライドシェアの解禁はなるのか。その行方は次回。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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