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【排水規制高まる台湾、海外展開の好機】
大阪商工会議所「台湾水ビジネスセミナー」を終えて

2015年07月15日 段野孝一郎


 2015年7月7日(火)、大阪商工会議所にて開催された「台湾における水ビジネス参入セミナー~水問題が深刻化する台湾に見いだす新たなビジネスチャンス~」に、講演者として参加した。講演の概要は次の通りである。

図表-1 講演内容


1.「台湾の排水処理事情と水ビジネスニーズ情報について」
台湾工業技術院 材料化学研究所 水技術研究部門 部門長 梁徳明
Director of Water Technology Research Division,
Material and Chemical Engineering Research Labs LIANG Teh-Ming

2.「日本企業の海外進出における台湾水ビジネス参入の可能性」
株式会社日本総合研究所 総合研究部門
ディレクタ/プリンシパル 段野 孝一郎

3.質疑応答

 はじめに、台湾工業技術院の梁博士より、台湾の排水処理の現況と排水処理に関するニーズについて紹介が行われた。水源が限られている台湾では、水源涵養の目的で、水源に近いエリアに立地する工場、工業団地では、排水処理規制が強化される方向で政策が検討されている。現在はCOD:100mg/Lだが、今後は1日当たり1万トン以上の排水を行う事業では、COD:80mg/Lの規制が課せられる見通しである。また、CODに加えて、アンモニア性窒素やリンの排水基準も強化される見込みである。そのため、多くの事業所ではより一層の窒素除去が可能な排水処理プロセスの構築が急務となっているという現況が紹介された。

 都市排水分野では、下水処理施設は建設されているものの、下水管路の普及がまだ十分ではない。そのため既存の下水処理施設に集まる汚水が設計容量よりも少なく、曝気槽での酸素濃度調整がうまく機能しないなどの要因により、既存施設で生物処理が想定どおりに行われていないといった問題が顕在化しているという点も強調されていた。

 講演の最後で、水資源に乏しい台湾では、排水規制の強化に加え、排水の再生利用に関する規制草案を策定中である話が紹介された。2031年までに1.32億トン/日の再生水を製造可能にすべく、複数の再生水プラントの建設や、工業生産・ユーティリティーにおける再生水利用の増加を目標として掲げているようである。台湾の事情として、再生水の活用方法に応じて、EDR(逆電気透析)、RO膜処理等の技術の使い分けが図られているという点が印象に残った。EDRはコストが安価である一方、得られる再生水の品質はRO膜に劣るため、高度な水質が求められない用途(例えば、工場内の冷却用水等)に用いられる。一方、上水など、より高度な水質が求められる用途には、RO膜での処理が用いられるようだ。

 排水規制の強化、再生水の活用拡大が図られる台湾では、従来よりも高度な水処理技術が必要とされ、梁博士が率いる台湾工業技術院・材料化学研究所・水技術研究部門でも研究が盛んに行われている様子が伝わってきた。

 梁博士の講演に続いて、筆者から「日本企業の海外進出における台湾水ビジネス参入の可能性」と題して、わが国の水ビジネス市場の動向、海外の水ビジネス市場の動向、主要事業者の動向、それらを踏まえた際の台湾における水ビジネスの可能性に関する所見を説明した。

 日本国内の水ビジネス市場は今後、大きな事業環境の変化が生じる。上下水道事業においては職員の高齢化・人数減少、水需要の減少、債務超過の問題が顕在化する中で、各種施設の大量更新問題に立ち向かわなければならないことや、省エネ・省資源化の流れや産業の海外移転に伴い、水ビジネス市場は縮小傾向にあることを説明した。

 一方、海外に目を向けると、グローバルの水ビジネス市場は2025年頃に100兆円を超える見込みだ。現時点では上下水関連市場が50.3兆円と最も大きく、事業運営分野が30.9兆円と続く。産業用水関連ビジネスの市場規模は5.3兆円と小さいが、新興国の経済発展や運営アウトソースニーズを背景に、年平均成長率14.1%と高い成長率を見込む。このように市場が伸長する中、海外市場では多様な形態で民間活用が進んでいる実態や、イニシャルコスト重視と考えられてきた新興国においても、経済発展に伴い、維持管理費用の重視や、資産のオフバランス化などの新たなニーズが顕在化している現況を説明した。

 講演では、このような外部環境の変化の中、日本企業も海外市場により積極的にチャレンジするべきであり、排水規制の強化(回収リサイクルの徹底)や電子・半導体産業の成長により、下水市場や産業排水市場の拡大が見込まれ、さらにECFA(両岸経済協力枠組協定)を活用して、巨大マーケットである中国にもアプローチ可能である台湾は、わが国企業のグローバル展開先としては有望市場の1つであるという所見を述べた。

 講演には、水ビジネスに従事する多数の事業者が参加され、大いに盛り上がった。本講演が、台湾を橋頭堡としたわが国の水ビジネス関連企業のグローバル展開の加速につながれば、講演者として望外の喜びである。

※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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