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新事業開発推進時の共創関係:インキュベーターの3つの役割

2015年04月14日 松岡靖晃


 シンクタンクではなくドゥタンク。創発戦略センターは、事業を構想し社会的意義を世に問う提言だけに留まらず、その提言を実現するための「動き」を作っていくことが特長である。「動き」を創りだすためには、いかに事業を経済的に成立させ、持続的なものにするかという視点が重要となり、社会的意義と経済的自立の両立という難しい命題に、様々なステークホルダーと共に取り組んでいる。
 筆者自身は、これらの「動き」をビジネスとして成立させるために、大企業の新事業開発担当責任者との協働を主に担っている。新事業開発責任者が日頃抱えるプロジェクト構想と日本総研が提案するプロジェクトアイデアを組み合わせ、コンサルタントという役割は持ちつつも、より一歩踏み込んだ共創関係を構築する。両者の考えを踏まえ、より昇華されたプロジェクトを実行し成果を追求することがミッションである。

 共創関係を目指すとき、果たすべき役割は3つある。時と場合に応じてこの役割を使い分けながらプロジェクトを推進している。なお、この役割はコンサルタント側の役割として整理しているが、そこで発揮されるべき価値は新事業を担う担当者にも同様に求められる。両者が状況に応じて役割を認識し、相互尊敬の関係性を構築することが重要だと考えている。
 1つめは、マクロトレンドの変化を伝える役割である。我々は、マクロ指標の定点観測を行いトレンドの変化を把握している。また、多くの分野で事業構想の実現を働きかけるために、世界各国の類似事例の収集、政府や企業関係者とのディスカッションを主体的に行い関連情報の蓄積をしている。これらインプットを活用し、マクロ指標のトレンド変化を底流に感じつつ、日々の活動を通じた社会や業界の微細な変化をお伝えし続けることが重要である。
 2つめは、主体的に課題解決方法を提示する役割である。我々は、各企業が抱える課題を、広範な視点で客観的に整理できるポジションにある。山積する課題を構造化し、企業が前提としがちな制約条件を取り外して考えるだけでも、その打ち手は大きく広がる経験をしている。プロジェクトメンバーとしてクライアントと違う視点、例えば、他社リソースの活用や類似プロジェクトの成功モデルの援用など、自社内では実現し得ないレバレッジを効かした解決方法を提示することが重要である。
 3つめは、現場と経営層をつなぐ役割である。我々は、「社会的意義を実現するために各企業はどんな役割を担うべきか」を常に意識するポジションで活動をしている。社会的意義を起点とした整理により各企業の強み・期待役割を整理しているが、経験則上、企業の長期ビジョン・方向感と合致することが多く、高い目線でプロジェクトの取り組みを整理することができる。プロジェクトの取り組みについて大局観とプロジェクト現場の両面を見据えた論点を提示し、経営と現場の両者の想いをすり合わせつつ、全社にプロジェクトの取り組みを理解・浸透させていくことが重要である。

 これまで新事業開発プロジェクトを複数経験している。プロジェクトが本格化し、顕在化した課題解決に集中するほど、社会の根本的なニーズやメガトレンドとの乖離や、会社の経営方針との乖離への手当てが疎かになり、社内外の直接的・間接的な支援が得にくくなる状況を見てきた。共創関係を理想とするコンサルタントとしては、外部の人間、内部の人間という二分論ではなく、主体的に課題解決に取り組む当事者意識を持つのはもちろんのこと、時に外部のアドバイザーとして、時に組織内部の力学を理解したフィクサーとして、場面に応じて役割を使い分けていくことが重要と考えている。我々が、自らをコンサルタントではなくインキュベーターと自己定義している所以もここにある。こうした存在に価値を見いだしていただける新事業担当責任者の方々と一緒に活動し、社会的意義のある新事業を共に創りあげていくことを今後も続けたい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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