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Business & Economic Review 2005年02月号

【FORECAST】
2005年度関西経済の見通しと再生への課題-中部経済との比較を通じて

2005年01月25日 吉本澄司、西浦瑞穂


要約
  1. 関西経済は、輸出とデジタル製品の需要を牽引役として、企業部門主導で回復してきた。業態別では、製造業主導で回復が進んできたが、景気が拡大するにつれて非製造業でも業況の改善がみられるようになった。これに伴い回復が遅れていた雇用情勢にも明るい兆しがみえ始めている。

  2. その反面、最近の関西経済には、a.在庫積み上がり、b.海外経済の先行き不透明感の高まり、c.原油価格の高止まりや円高の進行などの懸念材料が出てきている。こうした要因が関西経済に与える影響は個々にみれば深刻ではないが、複合的に絡み合った場合、輸出の増勢鈍化や設備投資の抑制などによって成長が減速する懸念がある。

  3. 2005年度の個人消費は、企業部門の回復が雇用や所得の改善に緩やかに波及する一方、税や社会保険負担の増大による可処分所得の押し下げや消費者マインドの慎重化が見込まれるため、2004年度の増加率(実質0.7%)をやや下回る0.4%増の見通し。

  4. 設備投資は、企業収益が好調である反面、関西経済・日本経済を取り巻く環境に幾つかの懸念材料が出ていることや先行きの成長鈍化を見越して、投資の実施に慎重な姿勢も出始めており、増勢が緩やかになっていくと見込まれる。2005年度は実質で3.5%増の見通し。

  5. 輸出は、世界経済の減速を背景に鈍化が見込まれる。ただし、2001年には世界経済の落ち込みが輸出の大幅な減少につながったのに対して、今回、増加基調は維持するとみられる。2005年度は実質で6.1%増の見通し。

  6. 関西の2005 年度の実質経済成長率は1.2%に鈍化する見通しであるが、今回の回復が始まる前の1991~2001年度の成長率が年平均0.2%であったことに比べれば底堅い動きといえる。

  7. 関西経済と中部経済を比較すると、規模では製造業で中部が、非製造業で関西が上回っているが、製造業の勢いの差が非製造業にも影響して、非製造業の成長率は中部が高い。非製造業に対する地域内の需要を支える経済基盤が弱いままでは、非製造業の雇用誘発力の強さを生かすことができない。関西は製造業の再活性化を再生の起点に位置付けるべきである。

  8. 関西ではここ数年、投資助成制度や税制優遇措置、事業用定期借地制度などの企業誘致策を講じ、一定の成果を上げつつあるが、最近は他の地域の企業誘致活動も積極化しており、地域間競争は激しさを増している。

  9. 企業立地は、いったんある地域に決定すると当面は能力増強も当該地域で実施される可能性が高く、一定期間が経過して大規模な拠点再配置の必要性が生じるまで地域が固定化されるため、関西の地方自治体が後からより有利な制度を用意しても誘致が実現しないということが起こり得る。関西の地方自治体は、後手に回ることがないように、企業誘致を一段と強化すべきである。

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