コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2005年02月号

【STUDIES】
消費者金融会社の実態とその将来性を探る

2005年01月25日 調査部 経済研究センター 主任研究員 岩崎薫里


要約
  1. 消費者金融会社は、利用者メリットを徹底的に追求した商品・サービスの提供、および与信管理に関する高度なノウハウを武器に1990 年代に急成長し、いまや消費者ローンの中心的な担い手となっている。

  2. 消費者金融会社の優れた商品性、サービス性は具体的には、a.審査手続きが簡便で、短時間で借り入れの可否が判明する「即時性」、b.利用者が容易かつ柔軟に借り入れ・返済を行なうことのできる「利便性」、c.プライバシーへの配慮が大きい「秘匿性」、の3点に集約できる。

  3. 消費者金融会社が90年代に急成長したのは、自動契約機の導入などで「即時性」、「利便性」、「秘匿性」の三つの特性が一段と促進される一方、東証一部への上場やテレビ・コマーシャルの積極的な放映によりマイナス・イメージが軽減された結果、潜在顧客の掘り起こしに成功したためである。しかし、2001年度以降それらの効果が次第に剥落する一方、景気低迷の長期化や債務整理の増加により貸し倒れが急増し、収益は軒並み悪化した。

  4. 2004年度上期決算では、景気の回復などを背景に大手消費者金融会社の貸し倒れは総じて減少に転じたものの、このまま貸し倒れが着実に減少し続けるか否かは予断を許さない状況にある。そのうえ消費者金融会社は、主要顧客層である若年人口の減少、さらには過払い金返還請求の増加や出資法の上限金利の引き下げ懸念など、貸付金利を巡る不透明要因を抱えている。こうした逆風に打ち勝つために、消費者金融会社大手が共通して取り組んでいるのがコスト構造の見直しである。武富士を除く大手3社はこのほかに、業務領域の拡大を通じて収益体質の強化を図っている。多角化戦略は、収益の振れを極力小さくし、期ごとに安定したリターンを確保するという観点から有効と判断される。

  5. 消費者金融会社の潜在市場を試算すると20兆1,000億円と、現在の市場規模である10兆2,000億円を大幅に上回り、消費者金融会社の市場拡大余地はいまだ大きいといえる。もちろん、消費者金融会社が潜在市場のすべてを取り込むことは想定し難い。しかしながら、雇用や所得の変動幅が拡大するなか、所得の平準化を目的に幅広い年齢・所得層の間で消費者ローンに対するニーズが増加すると予想され、その一部は消費者金融会社に向かう可能性がある。銀行との業務・資本提携によって、大手消費者金融会社が銀行の顧客基盤を活用できるようになることや、消費者金融会社のマイナス・イメージが軽減されることが、この流れを後押しする要因として作用しよう。

  6. こうしてみると、消費者金融会社は今後も引き続き成長することが期待される。そのなかで、消費者ローンに販売信用を含めた消費者信用市場を中長期的に展望すると、a.銀行による消費者ローンの本格展開、b.相互参入や新規参入の活発化、c.系列化の進展、などを通じて、消費者信用市場およびそのなかのプレイヤーは大きく変貌することが予想される。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ