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日本総研ニュースレター 2010年6月号

参入好機の中国EC(電子商取引)市場へのアプローチ

2010年06月01日 松岡靖晃


中国EC市場の潮目が変わった
 個人間で電子商取引を行なう、いわゆるCtoC取引がメインであった中国のEC(Electronic Commerce: 電子商取引)市場で、BtoC取引の成長が著しくなってきた。2009年は前年比2倍超の3,000億円規模に達した市場は今後も拡大基調であり、なかには2012年には2兆円を超えるという予測さえ見られる。
 ユーザーの自己責任が原則のCtoC取引では、商品が偽物であったり、アフターサービスが不十分であったりと、購買者が不満を持つことも多かった。BtoC市場は、こうした不満の受け皿として人気を集めるようになり、さらに商品を供給する側も、ECを魅力的なチャネルと捉え始めている。

ECを有効活用できていない日本企業とその原因
 拡大するEC市場を好機と捉え、日本企業もEC市場に商品を積極的に供給し始めている。しかし現在のところ、ECで期待通りの結果を得ている企業はほとんど存在しない。その原因は2つある。
 一つの原因は、適切な消費者にリーチできていないことが挙げられる。日本企業が中国で販売する際には、商材(原料)、販売手法、企業形態等によって各種規制がかかる。また、整備されつつあるとはいえ売買に伴う決済、物流、コールセンターといったフルフィルメントの整備状況は、日本と比較するとまだ十分とは言えない。日本企業の担当者はこれらへの対応に忙殺されてしまい、一番重要である、「適切な消費者に効果的にリーチできるEC企業の選別とその交渉」に時間を割けなくなっている。結果として、販売体制は苦労して整えたものの、実際の売上は泣かず飛ばずの企業も少なくない。
 また、適切な消費者にリーチできない背景の一つとして、ポータルサイトに商品供給するのみでマーケティング施策が不十分というケースもある。日本企業の現地法人は、実店舗での販売拡大に既に手一杯の状態となっている。そのため、ECへの本格参入を行うには、消費者へのリーチ手法の検討に十分な時間を確保できる体制を、マネジメント層を中心に再整備することが欠かせない。
 もう一つの原因として挙げられるのは、競合商品の研究が不十分なため、自社商品の優位性・差別性を消費者に伝えられないことである。
 そのポテンシャルを狙って世界各国から有力企業が参入する中国市場は、日本国内では競合しない企業でさえ競合となり得るほどの激戦市場である。ユーザーによる製品比較が容易なECは、商品の差別性が認識されなければ即コスト勝負の土俵となり、ハイエンド商材で勝負をする傾向の強い日本企業の勝ち目は薄い。にもかかわらず、競合との差別化を意識したマーケティング戦略を構築している日本企業は少ないのが現状である。

日本企業は連合して中国EC市場にアプローチせよ
 日本企業が中国EC市場で存在感を発揮するためには、適切な消費者にリーチできるEC企業に商品供給し、競合商品にはない魅力を消費者に訴求することが重要である。これを達成するために、日本企業は連合して中国EC企業にアプローチすることを提案する。
 これまでも日本商品を集めたサイトはいくつか創設されてきたが、いずれも“売り場”を提供するのみで、“売り方”を支援しているとはいい難い。本提案は、ECを介して中国市場の販売拡大を望むメーカーが、主体的に“売り方”を検討する活動である。この活動に取り組むことで、「煩雑な規制情報を効率的に収集・共有する」「世界各国の競合との差別化として『日本』の強みを打ち出す」「中国EC企業に対して団体交渉をし、狙っている消費者に効果的にリーチする」など、企業単独では実現しにくいソリューションを生み出せる。
 従来の中国EC企業はアフィリエイトなどのプロモーションに多額のコストを費やすことでターゲットにリーチする企業が多かった。しかし、最近ではウェブ技術を駆使した顧客管理を得意とするEC企業も出現している。このようなマーケティング力に長けたEC企業に対して、日本企業は連合して日本の強みを活かした提案を仕掛け、EC市場で一定のポジションを築くことを狙っていくべきと考える。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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