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日本総研ニュースレター 2009年10月号

「エコオペレーター」育成が、さらなる省エネのカギ

2009年10月01日 武藤一浩


厳しくなり続けるCO2排出規制
 事業者単位で毎年1%以上のエネルギー削減を目標とする改正省エネ法や、昨年可決された東京都のCO2排出規制など、事業者に求められるCO2排出量削減の負担は重くなり続けている。さらに、政権が民主党に交代し、CO2削減目標を15%削減(1990年度比では8%)から25%削減(1990年度比)に引き上げられることも現実味を増してきた。
 一方で、わが国は欧米に比べ省エネが進んでおり、CO2削減余地はこれ以上見出せないとの意見も根強い。
 事実、産業部門では1990年度を基準とすると、2007年度の排出量は約1.2%のマイナスで努力の跡がみられる。しかし、サービス関連事業の「業務その他部門」は約42%も増加となっている。これは、サービス関連事業の発展による全体の増加もあるが、一概にそれだけが要因ではない。

産業部門以外の省エネを検証する
 工場以外の大型施設(サービス関連事業が大多数を占める)の省エネを整理すると、下図のように省エネ機器の導入を含め大きくの三つの領域に分けられる。


 京都議定書が締結された1997年以降、省エネ意識の高まりから、領域(3)については着々と効果を上げてきている。一方、領域(1)では、今までは省エネの視点よりは施工全体費用の安さで決定されることが多く、また、設備更新においても、エネルギー会社や設備会社の意向が強く働き、過剰と思われる設備機器の導入や日常の運用にあまり配慮されていないような省エネ提案が繰り返されて来た。
 さらに、領域(2)については、季節や平日・休日等のエネルギー負荷の違いに対して、適切に運転を調整し、運転効率の最大化を図るといった取り組みが、多くの場合、あまりなされてこなかった。また、そのようなことをしっかりと改善提案できる手法や効果の上がる形で的確に実施指導する事業者もあまり存在しなかった。これらの課題はエネルギー設備関係者の間では、以前から認識をされていながら、事業としての収益性や技術力に裏付けされた地道な活動が必要なことから、十分に対処してこなかった背景がある。

「エコオペレーション」で一層の省エネが可能
 以上の背景を踏まえ、事業者が今後、無理のない費用負担の範囲で効果的に省エネを進めるために、日本総研では、以下のステップによる省エネモデルを構築している。


<ステップⅠ:運転改善フェーズ>
 ここでは、費用と効果の関係を考慮した必要最低限度の設備更新に繋げる運転改善手法を検討する。具体的には、冷凍機やボイラー、発電機など既存のエネルギー設備についてその運転を限界まで最適化(=エコオペレーション)することでの省エネの可能性を検討し、具体的な提案を行う。
<ステップⅡ:省エネ機器の導入フェーズ>
 ステップⅠを踏まえ、ESCOなど設備更新に関する成功報酬型の事業スキームなどを活用した設備導入の検討をする。また、設備導入の省エネに関しては、国、自治体が補助支援をしているので、これらを組み合わせる。
 ただし、このモデルではエネルギー設備の運転改善(エコオペレーション)がキーとなるため、設備の運転員はエコオペレーションが「出来て当たり前」のレベルに達していることが前提となる。よって、運転員のエコオペレーションを定量評価し、省エネを推進する『エコオペレーター』の育成が欠かせない。
 省エネが進むといわれるわが国であるが、実は面倒な課題は後回しにしてきた。これ以上のツケを後世に回さないよう、「今」喫緊の対応が求められている。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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