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日本総研ニュースレター 2009年3月号

全従業員に目を向けた真のワーク・ライフ・バランスの実現
~「2008年度わが国企業のCSR経営動向調査」結果より~

2009年03月02日 小島明子


 日本総研では、社会的責任投資(SRI)のための企業調査「わが国企業CSR経営動向調査」を毎年、実施している。調査票は「環境編」と「社会・ガバナンス編」からなり、企業のCSRの取り組み状況について尋ねたものである。本年度は、東証一部上場企業1,663社およびその他の市場に上場している時価総額上位企業の計2,000社に対してアンケート調査を実施した。全体の回答社数は398社(回答率19.9%)、調査票「環境編」の回答社数は395社(回答率19.7%)、調査票「社会・ガバナンス編」の回答社数は371社(回答率18.5%)であった。

せっかくの休業制度も有名無実に
 本年度の「社会・ガバナンス編」では、「仕事と生活の両立支援」の取り組み状況をテーマとした。
 今回の調査では、育児や介護時の休業については、制度の整備が進められていることが分かった。例えば育児休業を法定を上回る水準で認めている企業は62.3%、介護の場合で57.4%と、共に約6割程度にまで達している(グラフ1)。このことから、休業制度自体は比較的普及してきたということができるだろう。


 ただし、休業制度の使い勝手のよさには、まだ課題を残していることも明らかになった(グラフ2)。「制度の利用者が出た場合に部署の人員構成を考えて人の補充等を行っている」企業は50.9%に上るものの、一方で、休業者が発生した職場で他の従業員の負担が増加した際に給与等で配慮するなど、休業制度対象者以外の不公平感を是正する制度を設けている企業は11.6%に過ぎない。これではせっかくの休業制度も残される同僚に気兼ねして使いにくくなり、「仕事と生活の両立支援」は有名無実となってしまう。


ワーク・ライフ・バランスの実現は全社的な取り組みで
 どの制度でもそうだが、特定の従業員だけが恩恵にあずかれる、という制度は理解を得られず、結果として有効に機能しない。今回の調査結果からも、真の意味での育児・介護の休業制度が定着しないことへの危惧を感じる。
 こうしたなか、百貨店の髙島屋では「育児をしていない従業員を含めた取り組み」の推進を掲げている。女性が活躍する職場としての歴史が長いだけに、休業制度を機能させるには、結局全ての従業員の支持を獲得しなければならないことにいち早く気が付き、実感しているからだろう。
 仕事と生活の両立を意味するワーク・ライフ・バランスの実現には、「仕事」の場である企業の理解が欠かせない。企業側も、従業員のワーク・ライフ・バランスを実現させることで、彼らの満足度や士気を向上させることができ、結果としてビジネス上のメリットを得られるはずである。
 企業は、真のワーク・ライフ・バランスの実現を念頭に、制度設計を今一度見直さなければならない時期を迎えているのである。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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