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日本総研ニュースレター 2010年11月号

自治体では10年以内に財源枯渇、インフラPPP待ったなし

2010年11月01日 東一洋


新成長戦略で注目されるインフラPPP
 高度成長期に整備されたわが国の社会資本ストックの多くは、これから一斉に更新時期を迎える。しかし、公共施設や道路等の社会資本ストックは、計画的に建設が進められてきた一方で、建設後の維持管理については必ずしも計画的であったわけではない。また、本来は増えざるを得ない維持管理経費が、財政難の近年ではむしろ削減の傾向さえある。6月に閣議決定された新成長戦略でも、財政難が社会資本ストックの更新を滞らせることへの懸念が示された。
 日本総研では、地方自治体における社会資本ストックの更新・維持管理の現状と課題を明らかにするために、自治体の企画財政部門、道路管理部門、水道事業者に対してアンケート調査を2010年7~8月に実施した。
(※調査概要はニュースリリースとして、「道路編」を2010年10月7日、「上水道編」を10月18日、「企画財政編」を11月8日に発表)

全国の自治体で10年以内に財政的課題が顕在化
 調査で明らかになったのは、90%を超える自治体において、今後10年以内に社会資本ストックの更新・維持管理が財政的課題となると予測されていることである。特に道路は、財政的理由で充分な維持管理が難しくなっている自治体が、現時点で既に72.9%にも上る危機的な状況にある。
 各自治体では、新規投資の抑制や他経費の削減などの短期的な対応のほか、予防保全の徹底で財政負担を長期的に軽減させようとしているが、今後はそれらだけでなく、民間企業との連携による効率的な維持管理の推進の検討が不可避である。政府の新成長戦略においても、「PFI、PPPの積極的な活用を図る」ことが提言されている。

遅れが目立つ経済的インフラの取り組み
 本調査で浮かび上がった社会資本ストック別の自治体の課題認識の大きさと効率的・効果的手法の導入度合いを偏差値化してプロットしてみると(図-1)、社会的インフラ(◆)に比べ経済的インフラ(◆)(道路、上下水道など)の取り組みの遅れが目立つ。これは経済的インフラに適用される関連法によって、民間委託が制限されることの影響によると推測できる。道路や上下水道分野の更新・維持管理には、早急にPPP手法の導入検討が進められるべきであるが、その場合には、法の整備も伴う必要がある。




水道はコンセッション方式の導入を
 同じPPPでも、道路と水道では活用すべき委託方式が異なる。例えば、水道事業者の場合、包括的民間委託に比べて、事業運営の効率化よりも民間の専門知識・技術力の活用の比重が高く、民間の創意工夫や経営ノウハウを引き出しやすいコンセッション方式への関心が高い。本調査でも、今後10年以内での導入検討意向が13.5%に上った。
 なお、平成20年度の営業収入が約3兆円である水道事業者の13.5%がコンセッション方式を導入する場合、3,000~4,000億円程度のPPP市場が創出されることになる。

まとめ
 包括的民間委託(道路部門)やコンセッション方式(水道部門)は、今のところ事例の少ないPPP手法であり、制度設計には自治体の維持管理の現状と、受け皿となる民間企業の意向との調整を行うことになる。
 また、関連法の改正をはじめ、実施前検討段階での自治体への財政支援、更新や維持管理に関する補助金制度の再構築、庁内ノウハウ不足を補う各種の情報提供、市町村などの行政単位の枠を超えた広域的対応スキーム(政策によるマーケット誘導など)の提示など、多くの検討事項の解決が、PFI/PPPを柔軟に活用できる環境を整備するために急務である。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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