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日本総研ニュースレター 2014年7月号

地方のエネルギー会社は地域コミュニティのコンシェルジュとなれ

2014年07月01日 松岡靖晃


地方エネルギー会社は「非価格競争」で戦うべき
 電力小売りを2016年に全面自由化する電気事業法改正案が衆参両院で可決した。また、別途議論が進むガス市場についても全面自由化される見込みだ。家庭や商店に誰でも電気やガスを売れるようにし、柔軟な料金を設定できるようになる。これまでのエネルギー業界に留まらず異業種からの参入も予想され、高止まりする料金の抑制、新サービスの開発が期待できる。
 電力、ガスは商品自体での差別化がしにくく、価格競争に陥りやすい。自由化後、大手を中心とした調達競争がさらに激しくなれば、調達力の弱い地方エネルギー会社の勝ち目はない。地方エネルギー企業が生き残るには、事業エリア内の顧客を囲い込み、価格以外の価値による「非価格競争」に持ち込むことが鍵になる。

地域への貢献と総合的な生活サービスの提供
 地方エネルギー会社の武器となる「価格以外の価値」は「地元に根付いていること」、つまり地元で長年サービスを続けてきた実績のほか、地元自治体との強固な関係、地元出身の従業員など、地元顧客が応援したくなる「信用」「愛着」の要素だ。そして、地方エネルギー会社は、地域に貢献することでその応援に応えていく。例えば、これまでの商店単位での契約を見直して地元商店街を一つの大口契約先として割安な料金プランを提案したり、料理教室など商店街への集客イベントを実施したりすることで、商店街の活性化に貢献しながら地域を囲い込むのだ。また、災害時の非常用電源やエネルギー融通の仕組みを備えたマンション開発をはじめ、自治体とデベロッパーの協働をしかけて魅力的なまちづくりに参画するなど、大手エネルギー会社では対応しきれない地元の課題に真摯に対応していくことも欠かせない。こうした活動は、地元の雇用促進や自治体への納税増加につながるため、自治体の協力も得やすい。
 また、これまで築いてきた信用力を生かし、エネルギー会社の枠組みを超えるサービス領域にも積極的に進出するべきだ。物販ばかりでなく、例えば、住宅機器のメンテナンスや独居老人への定期的な声かけサービスといった住居に入り込むサービスでも、日頃から検針やエネルギー機器のメンテナンスで親しまれているエネルギー会社には住民が身構えず、スムーズに展開しやすい。また、総合的な生活サービスの提供で顧客接点回数を増やし、住民との対話が密になれば、新しいニーズの収集やソリューションの提案もしやすくなる。さらに、新サービスによって住民との関係が深まることで、本業のエネルギー供給もスイッチされにくくなる効果まで見込める。

地域にソリューション提案ができるコンシェルジュに
 こうした企業への脱皮には、以下の3点が重要だ。
 一点目は、地元住民を理解することだ。地域にもよるが、10年後の人口構成は大きく高齢者側にシフトし、老年単身世帯やDINKSが増加するなど世帯のあり方も変わる。エネルギー供給事業であれば顧客の「量」を把握しておけばよかったが、総合生活サービスを提案するポジションを狙うには、顧客のこうした「質」の理解が必要だ。よく知っているはずの地元エリアも、将来予測を分析すると様相が異なることも少なくなく、自由化前に改めて詳細な分析を行うべきだ
 二点目は、ICTの活用を積極的に行うことだ。住民と対話し、集めた声を解釈する顧客接点活動に営業担当者を集中させるためには、営業活動の側面支援や収集した情報分析はICTにできるだけ任せることが重要だ。また、こうして構築された顧客データベースは非常に価値が高く、将来、他の企業とアライアンスを組むなどの際の交渉力を高める道具となり得る。
 三点目はマーケティング人材の確保だ。エネルギー会社は、これまでエネルギーの安全・安心な供給活動を事業の中心としてきたため、予め決まった答えのないなかで住民の声を収集し、そこからソリューション提案をする経験に乏しい。今後はソリューション提案のできる外部人材の登用や、マーケティングの素養がある社員への教育が必要だ。
 これらの活動を通じて、地元住民・企業のニーズを先回りして提案するコンシェルジュ機能を充実していきたい。エネルギー供給に留まらない総合生活サービス企業を目指しながら地元から尊敬される企業になることが、地方エネルギー会社の生き残る道ではないだろうか。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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