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大学における教員評価制度の構築について

2014年10月30日 綾高徳


 大学の質保証システムは、大学の設置基準を中心とした旧来の“事前規制型”から“事前規制と事後確認の併用型”へと転換(平成16年以降)しており、「認証評価制度」が事後確認における役割を担うようになった。
 旧来の設置基準を中心とした事前規制型の質保証システムは、大学を新設する段階での教育活動に必要な諸条件の確認にとどまるため、実際の教育活動の質を直接的に保証することが難しい。加えて、進学率の上昇や社会の成熟化に伴って多様な大学教育が求められるなかで、変化に対応しようとする動きにつながり難いといった問題があった。
 「認証評価制度」は上述した問題に対応するために、認証評価項目の中に“教育の内部質保証”を評価基準として据えている。図表1で示す通り、教員評価制度は法人経営のPDCAサイクルにおけるCheck(測定・評価)として、人材マネジメントの領域で“教育の内部質保証”機能を制度的に担うことが期待されている。


図表1 教員評価制度の位置付け




出所:筆者作成


 教員評価制度の導入を検討している法人では、これまでの画一的な処遇(雇用形態、賃金処遇、研究環境および研究費等の配分)結果として、教員間で大学への貢献とその反対給付である処遇の間に不均衡が生じており、これを是正したいとの思いが高まっているように感じる。石田(1998)他が指摘するように日本は民間企業をはじめ多くの組織で、個人差が単年度の経営成績にほとんど影響しない生産労働者や一般の社員までも評価制度が浸透している稀有な国である。対して、人件費が消費支出のおよそ50%を占める大学において、その中心的役割を担う教員を、画一的かつ硬直的に処遇してきたことに対する矛盾をどうにかしたいと考えるのは当然のことのように思える。評価結果を使っていたずらに資源配分の弾力性やコントローラビリティーを高める、選択と集中を推進するといったことを企図しているのではなく、法人経営において重要視すべき点は施策をしっかり検討するための情報として教員評価を活用することである。例えば研究業績に偏っていた昇任基準に教育業績や大学運営および地域貢献に関する評価結果を勘案することで貢献を公平に捉えられるようにしようとするケースや、判断基準がないため均等配分するしかなかった教育研究費の在り方を議論するモノサシとして活用するといった事が考えられる。

 教員評価制度は大変意義のある制度であるにもかかわらず、特に私立大学において導入が十分に進んでいないことも事実である。嶌田ら(2009)の研究によると教員評価の実施率は国立大学で81.7% (※1)、公立大学で35.1%、私立大学で25.5%であると報告されている。教員評価の導入が低水準にとどまっている理由は、これまで法人経営のPDCAサイクルと教員の活動が個別の関係として存在しており、積極的な結合を必要としてこなかった点にあると言えるのではないか。
 そういう意味で教員評価制度を構築・導入する難しさは、「法人経営のPDCAサイクル」と「教員組織およびその構成員である教員個々人の仕事のPDCAサイクル」をどのように理解し、どのような形で関連付けて進めていくかという「ガバナンスの在り方」と密接に関連している。教員評価制度の構築・導入過程においては、ガバナンスに関する教員組織固有の問題が、各所に影響してくることになる。この部分(難しさ)を設計上どのように考えて制度化すべきか、という点が教員評価制度の構築から導入における論点と言える。

 以下に添付の資料は、三井住友銀行主催(2014年6月開催)大学経営者向け研修型セミナー「教員・職員評価制度の構築・運用のポイントとプロセス-制度の円滑な導入に向けて-」で使用した資料の一部を編集したものであり、コンサルティングの経験を踏まえて上述した論点の整理を試みたものである。
 今後、教員評価制度の導入を検討される際の一助になれば幸いである。

■三井住友銀行主催(2014年6月開催)大学経営者向け研修型セミナー 資料(一部編集)
教員・職員評価制度の構築・運用のポイントとプロセス ―制度の円滑な導入にむけて―


■添付資料の構成
Ⅰ 教員評価制度の構築
 Ⅰ-1 大学法人における導入の状況
  1.教員評価制度、事務職員評価制度の導入状況
  2.今後の展開(教員評価制度の導入について)
 Ⅰ-2 制度導入前の試算による検証
  分析1.全体傾向の捉え方
  分析2.職位・学部別の個人別得点合計分布(学部×得点合計の散布図)の捉え方
  分析3.職位・群別の個人別得点合計分布(年齢×得点合計の散布図)の捉え方
  分析4.得点合計の各評価要素寄与度の捉え方
 Ⅰ-3 施策への活用(評価結果)
  1.自学にて評価結果を活用する施策一覧を検討するフレーム例
 Ⅰ-4 制度導入に当っての事前整理事項
  1.教員評価制度の意義・目的
  2.大学経営におけるガバナンスの整理
  3.教員評価制度の対象者選定
  4.教員評価制度構築のスケジュール全容
  5.構築前ヒアリングにおける意見例(教員)
  6.教員評価制度構築プロジェクトを遂行する組織体制の全容
  7.教員評価制度説明会の開催形態
 Ⅰ-5 教員評価表の設計
  1.教員評価制度の評価方式の選択
  2.評価項目
  補足1.学生による授業アンケートの扱い
  補足2.総合点算出型評価に要する事務業務量(例)
  補足3.論文の区分(オーサーの適正使用)
 Ⅰ-6 制度の構築
  1.評価体制と評価プロセス
  2.フィードバックシートの設計
  3.フィードバック面談
  4.評価ランクの設定 

■脚注
※1 国立大学については国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律にて「大学の学長、教員及び部局長の勤務成績の評定及び評定の結果に応じた措置……学長が行う。」、「前項の勤務成績の評定は、評議会の議に基づき学長が定める基準により、行わなければならない。」(同法20条1項、2項)の求めにより、教員評価の実施率は高くなっている。)

■参考文献
石田光男「人事処遇の個別化と労働組合機能」『日本労働研究雑誌』第460号 日本労働研究機構(1998)
嶌田敏行・奥居正樹・林隆之「日本の大学における教員評価制度の進捗とその課題」『大学評価学位研究』第10号独立行政法人大学評価・学位授与機構(2009)
日本私立学校振興・共済事業団『平成25年度版 今日の私学財政-大学・短期大学編-』学校経理研究会(2013)

以上



※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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