シンガポールの対外直接投資の主要な投資主体は、MAS(Monetary Authority of Singapore)の外貨準備運用機関であるGIC(Government of Singapore Investment Corporation)と財務省が株式を100%保有するTemasek Holdings及びその関連企業である。まず、GICについてみると、同ファンドの主な資金源である外貨準備の増加を背景に対外投資は拡大傾向を続けており、政府系投資ファンドの研究機関であるSovereign Wealth Fund Instituteによれば、2014年7月時点の運用資産額は約3,200億米ドルとなっている。同ファンドの投資ポートフォリオにおける現金・債券比率は35%程度に過ぎず、大半は株式や不動産などに投資されている。株式投資における証券投資、直接投資比率は不明なものの、大型のM&AやGreen Field Investment案件にGIC及びその関連企業が多く含まれていることからも、同ファンドによる投資は同国の対外直接投資に大きな影響を与えていると判断されよう。なお、2013年4月から採用されているGICの運用方針である「Policy Portfolio」は、今後、現金・債券比率を下げ、プライベート・エクイティや不動産といった直接投資に分類される投資の比率を高めていく可能性を示唆している。