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電力自由化と地域

2014年02月14日 瀧口信一郎


 震災を経験して、地域が一定程度自らエネルギーを確保する動きが広がっている。この動きは、人口減少と高齢化で地域経済が弱まる中で、地域に存在する地熱、バイオマス、風力といった自然資源を活用し、地域に雇用を生み出し、地域経済に貢献するエネルギー事業を生み出す活動につながっている。自治体にエネルギー政策課などの新組織が作られ、エネルギーは国策のみならず地域政策となった感がある。

 地域エネルギー事業が加速する条件が3つある。

 1つ目は、自治体の旗振りである。地域に資金循環を起こすには、自治体が音頭を取り、自ら動く必要がある。自治体は地域の利害調整を行うのに適していると同時に、堅い需要を提供することもできる。自治体庁舎は街の中心に位置することも多く、コージェネレーションの設置で地域の熱利用を促進する。総務省地域政策課が地域の元気創造プラン事業の中でこれを加速する動きもあり、注目される。

 2つ目は、FIT(固定価格買取制度)により地域で増加した再生可能エネルギーの活用だ。風力、地熱、バイオマス、メガソーラーなどを活用して疲弊する地域経済をてこ入れしたい、という意識が地域で高まっている。FITの事業では、大手資本が主役で、地域に資金が還流しない構造があり、地域に貢献する事業の必要性が理解されている。

 3つ目は、2016年の全面自由化を控えた事業者が地域エネルギー事業へ参画することだ。先行する欧州の電力自由化では、規模の効果を追求する大規模電力が再編統合を通じて形成された。ドイツでは、地域資源を効率的に活用した分散型エネルギーにより、地域の顧客に密着するシュタットベルケ(地域エネルギー会社)が、大規模電力と異なるポジショニングを獲得している。本格的な電力自由化を控え、日本では、大規模火力発電の建設計画が話題となるが、事業者が大規模火力発電で勝ち残るのは容易ではない。この構造を理解する事業者が、地域エネルギー事業に参画し、大規模電力と異なるポジショニングを狙いつつある。

 地域エネルギー事業は、電力事業として捉えると、小口分散化し、変動の大きい分散型エネルギーを集約化するビジネスモデルである。本格的な電力自由化における参入モデルの一翼を担うことになろう。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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