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ないがしろにされずに生きるためのエネルギー起こしと仕事起こし

2012年09月27日 井上岳一


パート、アルバイト、派遣などのいわゆる「非正規」雇用の割合は、今や35%を超える。「非正規」の増加は、格差の拡大を生んでいるが、日本も欧米並みになってきたのだと思えば、格差の拡大自体を殊更にとやかく言う必要はないのかもしれない。だが、いつでも切り捨て可能、取り替え可能な存在として扱われる「非正規」の人々の抱える思いには敏感であるべきだろう。それは、「自分達はないがしろにされている」という感覚でないかと思うからだ。

この「ないがしろにされている」というのは、今の日本社会に広く共有されている感覚であるように思う。例えば、原発事故後の政府や電力会社の対応に、「自分や自分の子ども達の命がないがしろにされている」と感じた人は多いはずだ。福島の人には特にその思いが強いことだろう。それは「非正規」の人々が抱える思いと本質的に変わらない。根底にあるのは、経済ばかりを優先し、人の命や尊厳を軽視する政府や企業への怒りであり、絶望である。

だからと言って、政府や企業を批判しても何も解決しない。むしろ、政府や企業に頼らないでも生きていける基盤を自らつくるしかないのだと思う。エネルギーも仕事も(そして食料も)自分達で生み出すようにすればいい。

実は、戦前には、主として山間部の村々で、村民達が自ら集落内の電気供給を行う電気利用組合の設立が相次いだ歴史がある。電力会社に法外な負担金を払わないと電気の供給を受けられなかった「僻村」の人々は、「ならば」と資金を出し合って小水力発電や電柱をつくり、自ら発電と配電を行ったのだった。

仕事だって、企業に頼らず自ら起こせばいい。ワーカーズコープやワーカーズコレクティブと呼ばれる協同組合方式ならば、働く人自身が自らの資源を持ち寄って、雇われずに協同で働けるような仕組みをつくることが可能になる。

政府や企業にないがしろにされずに生きるには、このようにエネルギー起こしや仕事起こしを通じて、生きることの主導権を自らの手に取り戻すことが鍵になるのだと思う。そして、それが、ますますリスクが増大する社会を生き抜く上での鍵でもあると思うのだが、どうだろうか。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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