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【ESG投資の注目点】企業の社会的責任は「全範囲」に

2011年06月01日 ESGリサーチセンター、長谷直子


事業活動のバリューチェーン全範囲で発生する問題を企業(とりわけ大手多国籍企業)は把握し、責任を持たなければならない――。こうした考え方が広く支持されるようになってきた。コーポレート・ガバナンスの在り方や組織の進むべき方向性にも、そうした考え方が盛り込まれるべきとする投資家も現れている。実際に、優れた企業は、取引先(サプライヤー)における労働環境や環境対応にも注意を払っている。

例えば、発展途上国における児童労働の問題があげられる。安価な労働力を確保したいという企業の経済的な動機が優先される限り、この問題は依然として繰り返し現れてくる。

地球環境問題で言うと、環境負荷の低い代替燃料としてバイオマスの研究開発が進められている事実がある。ところが、過剰な農地転換により多くの森林が伐採され、生態系が破壊されているという指摘が強まっている。近年、レアアースやレアメタルは、自動車や家電をはじめ、ますます多くの製品に使用されるようになってきた。その一方で、採掘地での地下水や河川への汚染が問題視されている。

ただし、サプライヤー企業にどこまでの対応を求めるかについては、明確な基準がある訳ではない。例えば、「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)」では、各国の企業に対して温室効果ガス排出量の公表を求めている。それは、自社の事業活動において直接使用される化石燃料による温室効果ガス排出量(Scope1)や購入電力等の使用による間接的な温室効果ガス排出量(Scope2)の開示を要求しているだけではない。サプライチェーンで消費されるエネルギーによる温室効果ガス排出量(Scope3)も含めて開示することを推奨している。ところが、Scope3にどのような活動を含めるかなど、排出量の算定対象や算定方法については、国際的に共通した基準は決められていない。

国際基準については、法律やガイドライン等による整備が原則だ。しかし、企業同士が業界内で協力して検討していく姿勢も有効だろう。取組みが進んでいる企業が、業界内の基準策定に向けて牽引するリーダーシップを発揮している事例にも注目したい。ビジネスのグローバル化とともに、企業が事業活動を行う上で引き起こされるネガティブなインパクトも国境を越えて拡がっている。企業や業界、国などの壁を越えてこうした問題に取り組む企業こそが、ESG投資においても注目すべき企業と言えるだろう。

*この原稿は2011年5月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。
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