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【ESG投資の注目点】「紛争鉱物」に投資家の関心、米国で開示義務

2011年11月01日 ESGリサーチセンター、足達英一郎


日本国内の経済紙でも「紛争鉱物」が取り上げられようになり、投資家の関心を集め始めた。昨年、7月に成立した米国のドッド・フランク法(金融規制改革法)に「紛争鉱物開示規定」が盛り込まれた。米国市場に上場している企業はアフリカのコンゴ民主共和国やその周辺国で産出されたすず、タンタル、タングステン、金の4鉱物を製品や製造過程で使う場合、その旨を米証券取引委員会(SEC)に提出する年次報告書などで開示する旨を義務付けたのだ。

「紛争鉱物」とは、武力衝突、広範な暴力行為あるいは人間に被害を与える他のリスクが存在する地域で産出された鉱物資源を意味している。「紛争鉱物」は武装勢力の資金源になっているという見方が根強く、人道的配慮やテロ資金を遮断するというのが規制の背景である。 サプライチェーンの最も川上にある鉱物資源の使用の有無を確認しなければならなくなり、米国企業はもとより、米国市場に上場している日本企業や、米国企業と部品供給などで取引している日本メーカーには戸惑いが広がった。鉱山にまで遡って、金属原料の全過程を追跡調査することは容易ではない。例えば、半導体などに使われるハンダの原料はすずだ。米国の半導体メーカーからの照会を受けて、日本のハンダ製造大手では、世界各国にある精錬所に担当者を派遣して原料となるすず鉱石の産出地を確認する取り組みを開始している。

目下、関心の的は、アフリカのコンゴ民主共和国やその周辺国で産出される4鉱物。だが今後、企業活動と人権問題をめぐる議論が活発化するにしたがって、規制対象が拡大したり、米国以外でも同様の規制が生まれる可能性もある。将来にわたって、同様の情報開示義務が、コンゴ民主共和国やその周辺国の4鉱物に限定される保証はない。

こうした状況のなか、経済協力開発機構(OECD)は今年5月に、「紛争地域産出の鉱物にかかわる責任あるサプライチェーン構築のためのデューディリジェンス手引き」を採択して、民間企業に適用を呼びかけている。この内容は、①当該問題に関する強力なマネジメントシステムを社内に構築すること②自らのサプライチェーンにおけるリスクを見える化すると同時に評価すること③認識されたリスクに呼応する戦略を立案、適用すること④独立第三者によるサプライチェーンの監査を実施すること⑤こうしたデューディリジェンスの結果を報告すること――を柱にしている。

日本国内の大手家電メーカーのなかには、いちはやく、このOECDの手引きに則した社内管理システムを構築し、紛争鉱物問題の解決への貢献を目指すことを表明する企業も出てきた。

米国では、未だ詳細規則が公表されておらず、「紛争鉱物開示規定」は2012年から施行される見通しといわれる。ただ、開示内容が誤っていれば虚偽記載として罰則対象となる可能性もあり、関係企業は対応を急いでいるのが現状だ。そして、各企業の対応の進捗を、投資家は凝視し始めているといえるだろう。


*この原稿は2011年10月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。
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