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Business & Economic Review 2011年11月号

【特集 拡大する新興国経済と日本の対応】
内需拡大が続く中国市場に日本企業はどう取り組むべきか

2011年10月25日 松岡靖晃


要約

  1. 本稿は、内需拡大が続く中国市場において、日本企業が従来注力してきた沿岸部市場や最近注目度が高まる内陸部有力市場のみならず、一人当たりGDP20,000元水準に達した新興市区市場も魅力的な市場であることを示し、当該市場における日本企業の対応方針を提案するものである。なお、本稿では主に消費財を扱う企業を想定している。


  2. 中国市場における事業拡大に、沿岸部の中間所得層をターゲットとするいわゆるボリュームゾーンと呼ばれる市場の攻略や沿岸部に準ずる内陸部有力都市への進出は必須である。加えて、中国市場における企業活動の最大化を実現するためには、耐久消費財の需要が高まるとされる一人当たりGDP20,000元~30,000元水準の市区(これを新興市区と定義する)への進出も検討すべきである。現状、日本企業は沿岸部のボリュームゾーン市場や内陸部有力都市進出に注力しており、新興市区市場に本格的に取り組んでいる企業は少ない。


  3. 新興市区の市場開拓を進めるにあたり、三つの観点で検討を進めることが必要である。一つ目は各市区が発表する計画や目標などのマクロ指標と当該企業の商材に関する先行指標を分析、指標化し新興市区を横並びで評価すること、二つ目は既存事業で採用しているチャネルにかかわらずゼロベースでチャネルを再検討すること、三つ目は顧客ターゲットのニーズに即した価格競争力のある製品を手に入れることである。


  4. 新興市区の市場成長速度や顧客ニーズはこれまで日本企業が経験してきた中国ビジネスと異なる面が多いことから、既存事業の体制から独立させ現場への大幅な権限委譲を検討すべきである。中国消費市場を牽引してきた従来組織は、企業価値観の浸透やリスク管理を引き続き担い、新興市区攻略に複眼視点を取り入れることで組織内に健全なコンフリクトがおきるような体制を構築することが必要と考える。


  5. 中国は沿岸部から農村部まで雁行型な成長を果たし、かつ、グローバル企業がしのぎを削る競争環境が激しい市場である。この市場での経験は他の新興国で展開するうえで重要な示唆を与えてくれる。新興市区を含めた中国での事業開拓経験を他の新興国に展開し、中国発の日式新興国開拓モデルの構築も検討すべきである。
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