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Business & Economic Review 2011年9月号

【2011~2012年度見通し】
東日本大震災後の関西経済

2011年08月25日 西浦瑞穂、廣瀬茂夫


要約

  1. 2011年度の関西経済は実質0.9%成長と、全国(▲0.1%)を上回る成長となる見込みである。その要因は次の5点である。
    ①東日本大震災の影響が比較的軽微であること。実際、5月の鉱工業生産は2010年度平均を上回るなど堅調に推移している。
    ②夏場の電力不足は強制的な節電にまでは至っておらず、7~9月期のGRPに及ぼす影響は▲1.1%程度(年度影響に換算すれば▲0.3%)と乗り切り可能なものであること。
    ③企業収益が底堅く、設備投資も緩やかながら持ち直すとみられること。
    ④所定外労働時間がリーマン・ショック以前の水準まで戻ってきており、新たな労働需要の発生が雇用者数の増加につながりやすい状況になっていること。これを受けて個人消費も緩やかに回復すると見込まれる。
    ⑤外需は高めの成長を続ける新興国向けを中心に堅調に増加するとみられること。


  2. 2012年度においては、復興需要が本格化することもあって、関西の実質成長率は2.3%と加速する。
    もっとも、復興需要の多くは東北、関東で顕在化し、関西への影響は限定的である。仮に復興需要の規模を震災の被害額と同程度の16兆9,000億円と仮定すると、関西における付加価値誘発額は9,000億円程度。復興工事に3年を要すると仮定すれば関西のGRP押し上げ効果は2012年度で0.3%程度にとどま
    ると推計される。
    このことから、関西の実質成長率は全国(2012年度は3.3%成長の見込み)よりも低いものとなろう。


  3. 関西にとって最大のリスク要因は、電力不足の長期化である。検査後の原発が再稼働しない場合、2012年冬にも再び電力需給が逼迫し、2012年夏には25%程度の電力不足に陥る。この場合には、大口需要先への強制的な節電要請がなされる可能性が高い。関西のGRPへの影響は2012年7~9月期で▲3.5%程度と、相当のインパクトとなろう。さらに、電力不足は企業の海外移転を加速させかねず、国内設備投資の減退・雇用機会の喪失を通じて関西の成長阻害要因になる可能性が指摘できる。
    2011年度、2012年度の関西経済の特徴として、域外需要に支えられる点を挙げることができる。域内需要の牽引力を確固たるものにするためには、投資の呼び込みが重要な課題である。2012年以降大幅な電力不足が現実味を帯び、企業の海外シフトが一段と加速しかねないことを考え併わせると、一段の投資呼び込みにはこれまでとは異なる大胆な手段が必要と考えられる。府県単位の自治体には限界があり、関西広域連合を主体とした実効性・即効性ある施策の策定・実施が望まれる。
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