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SRI普及への新たな動き

2011年02月22日 小島明子


2010年12月6日に、日本労働組合連合会(以下、連合)が「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」(注)を公表しました。これは、労働者が拠出した、ないしは労働者のために拠出された基金であるワーカーズキャピタルの投資や株主議決権行使などの判断に際し、労働者(労働組合)が株主あるいは資産所有者としての権限を行使するためのガイドラインであり、財務的要素に加え、ESG(環境、社会、ガバナンス)等の評価に基づいた内容になっていることが特徴です。

国内のワーカーズキャピタルは、財務的要素による判断のみで運用を決定することが一般的であるため、年金基金などのワーカーズキャピタルの一部が、短期的なハイリターンを追求する運用に使われることもありました。また、ガイドライン自体も存在しなかったため、そもそもワーカーズキャピタルの所有者である労働者(労働組合)が運用方針の決定や投資先企業の選定などに関わってきませんでした。

このワーカーズキャピタル責任投資ガイドラインは、ワーカーズキャピタルの運用で責任投資を実行することが、社会的責任に配慮した企業行動や金融取引を促し、公正で持続可能な社会形成に貢献できるようにすることを目的として作られました。

労働者(労働組合)は、企業から雇用されている労働者という立場にとどまらず、資産運用の受益者という立場を通じて、企業に責任ある行動を促すために資産運用にも意思を表明することが可能となります。企業側は、ワーカーズキャピタルの運用において、社会的責任の視点から評価をされることで、これまで以上に環境問題や社会問題に配慮した取り組みを行っていくことが求められます。

国内では1999年にエコファンドが販売されるようになり、個人向けの投資信託を中心として、SRI(企業の社会的責任投資)が普及してきました。今回のガイドラインの発行により、労働者(労働組合)の声を通じて、年金基金等を中心としたSRIの発展が期待されます。

(注)日本労働組合連合会「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」
http://www.jtuc-rengo.or.jp/kurashi/sekinin_toushi/data/20101216_workers_capital.pdf


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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