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Business & Economic Review 2011年2月号

【特集 グリーン・グロース実現への道】
再エネ分散利用が促す地域活性化に向けた コミュニティサービス

2011年01月25日 松井英章、青山光彦


要約

  1. 再生可能エネルギー(再エネ)は、広く薄く分布するという分散的な性質を持っているが、発電量と需要の大きさとの兼ね合いにより、エネルギーを生み出す場所付近で利用する「分散型」の場合と、大型再エネ設備で発電し、需要地と供給地が離れた「集中型」の2形態があり得る。


  2. 家庭向け太陽光発電など、エネルギー需要と発電能力の大きさがおおむね釣り合っている場合であっても、発電した電気のうち、全量もしくは余剰電力分を電力会社が集めて再配布する「中央集権型」と、エネルギーを生み出す場所付近で需給制御する「分散管理型」の2方式が考えられる。どちらが良いとは一義的にはいえないが、系統全体の需給ギャップの均し効果が効かなくなる場合のリスク、配電網強化のコストなどを鑑みると、小口供給・小口需要のエネルギーの需給形態の場合には、その場所での活用を促していく分散管理型の方が有利であると考えられる。


  3. 分散管理型のエネルギー供給には、効率面での議論だけでなく、需要家によるエネルギー源の選択に寄与するという側面もある。自分の生み出したエネルギーを自分で活用したいという自然な欲求を満たす手段として有効である。また、エネルギー供給源の可視化も可能となり、エネルギー需給バランスが可視化されることとなる。低炭素社会実現に必須となる、利用と供給の双方の意識向上を図るうえで、分散化の意義は大きいといえる。


  4. エネルギー供給の分散化への移行は、かつて、ITシステムが中央集権的な形態から分散型システムに移行した流れと類似している。インターネットがルータを介して自律的なネットワークを形成したように、地域・家庭において、スマートグリッド機能によりその場所の太陽光発電などの発電状況に応じて自律的に余剰電力を融通したり、需要を制御することが可能になってくると考えられている。


  5. 再エネ分散管理に求められるスマートグリッドの形態としては、究極の分散形態である世帯ごとに蓄電池を完備した完全独立型と、一定の範囲の地域内でエネルギー融通を行う地域管理型があり得るが、蓄電設備への投資の効率性、ならびに様々な地域サービスの展開を考えると、後者の方が有効である。地域サービスを通じて、分裂しがちなコミュニティ意識の醸成を図ることも可能になる。


  6. 分散エネルギーの地域利用を核としたコミュニティサービスは、そのスマートグリッド情報基盤を活用しながら、日本の各地域が抱える課題を解決する機能を提供し得る。具体的には、エネルギー関連だけでなく、交通、医療、セキュリティといった分野でサービスを提供することが可能になる。


  7. これらの仕組みの実現のためには、地域マネジメントサービスの受け皿としてのタウンマネジメント組織が必要となる。これは、地域のニーズや特性を把握する、という観点から、地域密着型のインフラ系企業や地域住民の有志がかかわる管理・運営組織であることが望ましい。また、事業として成り立たせるため、管理費・会費を原資として、各種サービス全体のマネジメントを通して事業性を確立していくこととなる。
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