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Business & Economic Review 2010年10月号

【特集 アメリカの中間選挙以降の政策課題】
対気候変動政策

2010年09月24日 足達英一郎


要約

  1. 2010年7月26日、リード民主党上院院内総務はAmerican Power Act(いわゆるケリー・リーバーマン法案)の早期成立を断念することを発表した。オバマ大統領が対気候変動政策の中核に据えてきた、温室効果ガスの排出削減目標や排出量取引制度導入を裏書する包括的なエネルギー・温暖化対策法案の成立は、全く目途が立たないという状況に陥っている。

  2. 2008年、オバマ大統領は選挙戦で「2050年までに温室効果ガス排出を1990年比80%削減する。オークション型のキャップ&トレード制度(排出量取引制度)の導入を図るほか、年次削減目標の策定に即座に着手し、2020年までに温室効果ガス排出を90年レベルにすべく義務的な削減策を適用していく」との公約を掲げた。当選後も「気候変動に関してもアメリカのリーダーシップに新たな一章を刻む」、「地球温暖化を食い止めるため、たゆまず努力する」との積極的な姿勢を打ち出し、内外でアメリカの対気候変動政策の方針転換に期待する機運は大いに高まった。

  3. 新政権下では、対気候変動政策が「アメリカ経済回復・再投資法」のクリーンエネルギー投資などに具体化されて、注目を浴びた。しかし、温室効果ガスの排出削減目標や排出量取引制度導入を裏書する包括的なエネルギー・温暖化対策法案の議会での審議は難航しつづけた。エネルギー業界、共和党の反対、オバマ大統領の支持率の低下、コペンハーゲンの気候変動枠組条約締約国会議の失敗、メキシコ湾で原油流出事故などの要因が、法案の成立を困難にする方向に働いた。

  4. アメリカ国民は人為的活動による地球温暖化や気候変動を真正面からは危機として捉えていない傾向が強い。選挙戦から政権発足時に対気候変動政策が支持された背景には、①ブッシュ政権からの変化の象徴と位置付けられたこと、②石油価格高騰下での対応策として有効だと判断されたこと、③経済再生の切り札として期待が集まったこと、④ベネズエラや中東の原油からの脱却というアピールが説得力をもったことなどの理由があり、これら理由が失われて対気候変動政策の機運が後退したと分析できる。

    ただ、アメリカが対気候変動政策で足踏みすれば、気候変動防止のための国際的協調の議論にマイナスに作用することは確実である。本質的かつ長期的な気候変動対策を前進させるためには、アメリカ国民の環境意識の大転換が必須の要件となる
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