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Business & Economic Review 2010年5月号

【REPORT】
雇用の非正規化による地域間労働需給調整機能の拡大とその課題

2010年04月23日 西浦瑞穂


要約

  1. 2002年から2007年までの景気回復局面において、雇用者数は増加したが、正規雇用者数はほぼ横ばいにとどまり、増加の中心は非正規雇用者であった。この間、雇用増勢に地域間格差が拡大した。2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻後、わが国経済を取り巻く状況が急速に悪化し、大幅な需要の減少に対応するため企業は雇用調整に踏み切る動きを強めたが、非正規雇用者への影響が大きく、近年非正規雇用の活用が進んだ地域での調整が深刻であった。


  2. 2002年からの景気回復局面において、雇用増勢に地域間のばらつきが拡大した背景には、好調な業種の集積度の違いがあげられるが、地域間格差が広がるもとでは、雇用情勢や賃金水準の違いが誘因となって、労働需要の強い地域への移動を促しやすいものと考えられる。この間、雇用の増加が非正規雇用者を主としたものであったことを考えると、地域間労働需給調整において非正規雇用者の役割が強まった可能性が考えられる。


  3. 地域間移動においては住まいのコスト負担が制約要因となる。非正規雇用者の地域間の労働需給調整機能が今後も大きくなるとすれば、一般的に正規雇用者に比べて雇用の不安定さが大きいことに加えて、正規雇用者との賃金水準等の処遇格差が解消されにくいなかにあっては、移動に伴うコストの低減を、派遣企業などの対応のみならず、公的な支援としても検討されることが望ましい。さらに、生活基盤の不安定が拡大した背景には、民間賃貸住宅市場における慣習や制度が、機動的な住宅の確保を必要とする働き方の変化に十分に対応できていないことなどもあげられる。もっとも、地域間の雇用情勢や所得水準の違いなどにより非正規雇用者にも地域間需給調整機能が拡大した可能性を考えれば、セーフティネットの充実を図る一方で、こうした状況を生んだ地域間の経済格差を縮小していくことが求められる。
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