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Business & Economic Review 2010年3月号

【特集1 農業を核とする地域再生のビジョン】
地域再生の核となる農業ビジネスの構築

2010年02月25日 三輪泰史


要約

  1. 地域産業の劣化、高齢化、人口減少等、地方部は厳しい状況に置かれている。これまでは工業やサービス業の誘致による打開が図られてきたが、成功したのは沿岸部等の一部地域にとどまった。地域の産業構造をみると、主産業である農業を核に地域再生を図るという手法が汎用的といえる。農業単体では産業規模はGDPの1%程度と小さいが、農業は他産業との親和性が高く、食産業全体では規模が10倍にもなる。さらには、観光、教育、医薬品製造等との連携も期待されることから、これまで衰退産業と捉えられてきた農業の重要性に改めて注目すべきである。

  2. 農業と他産業の連携においては、農業自体の魅力向上が不可欠であり、優位性がなければ農業、他産業の共倒れ構造ができるだけである。農業再生の鍵としては、農家のこだわりや伝統といったストーリー性を重視した付加価値戦略と、その価値を消費者に的確に届けるダイレクト流通の構築が挙げられる。

  3. 農業と食品加工業、流通業、観光業等との連携には、大きな地域活性化効果が期待される。これらの産業との連携は経済規模の拡大はもとより、女性や高齢者の雇用創出等の効果を発揮する。また、魅力ある農産物を売りとした観光を展開することで、都市部から人を呼び込み、地域の活力を取り戻すことも可能であろう。ゆず加工品で村おこしに成功した高知県馬路村、6次産業化をキーワードに観光を大きく伸ばした広島県世羅町のように、各地で成功事例が生まれつつある。

  4. 加工業、流通業、観光業との連携という、農業を核とした地域再生の3方策は、やみ雲に同時並行的に行えばよいものではなく、地域特性に合わせたメニュー選択と優先順位の決定が重要となる。小規模な地方自治体においては、必ずしも3方策のすべてを実施する必要はなく、限定的な実施でも十分な効果が期待できる。農業の魅力向上、および他産業との連携を、農家単独で実現するのは困難である。そのため、周辺産業を含めた関係者を束ねる、いわば中核プレイヤーが必要である。このプレイヤーは単なる仲介者ではなく、自ら事業主体として関与していくプロデューサーでなければならない。有能なプロデューサーが地域に自然発生する可能性は低く、地方自治体としてプロデューサーの発掘・養成を積極的に行うべきである。