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Business & Economic Review 1995年11月号

【論文】
エコ・マネジメントの新潮流

1995年10月25日 事業企画部 萩原一平、事業企画部 足達英一郎


要約

21世紀に向けて新規産業の創造が要請されている。そのなかの成長市場として、環境関連市場がよく注目される。いわば、エコ・ビジネスの有望性に対する期待感である。しかし、エコ・ビジネスに対する需要は、需要側にとっては専ら追加的なコストの発生だけを意味する。企業には「環境保全に率先して取り組んでも売上が増えるわけではない」という認識が、消費者にも「環境に配慮した商品でも価格が高くなるのは望ましくない」という認識がある。したがって、自律的な市場の創出を必ずしも期待できない面がある。

そこで、かつて公害対策における環境基準の強化が、公害防止装置の大きなマーケットを創出したように、環境保全に関する規制的措置(例えば排出基準規制)をいま以上に強化することで、エコ・ビジネスの育成を図ることができるとする論が見られる。また、税・課徴金などの経済的措置の積極的導入を求める見解もある。両者とも有力な方策であるが、企業や消費者の側にそれを受け入れようとする社会的合意が未だできていないことが問題である。

この点で、注目されるのは来年に発効が見込まれるISO14000シリーズの持つ性格である。これは、環境監査を含む企業の環境管理システムを国際標準規格として定めようとするものだが、環境管理システムという考え方の基盤には「自発性」、「漸進性・継続性」、「公開性」などの原則が置かれている。すなわち、企業にある水準の環境保全努力を一律に求めるのではなく、「目標設定」、「組織作り」、「進行管理」、「評価」などのマネジメントのシステム構築をこそ求めて、そのシステムによって各企業に合った取り組み方と成果の継続的な改善を期待しようというものである。

こうしたエコ・マネジメントが整備されることで、エコ・ビジネスが振興され、エコ・ビジネスが隆盛することでエコ・マネジメントが一層高いパフォーマンスを上げることが可能になる。

環境管理システムの整備、普及を促進していくために、行政には国内外でダブルスタンダードになったり、業界ごとにその原則的手順にバラツキが生じないよう配慮をしつつ環境管理システムが全ての産業で構築されるよう誘導を図ることが期待される。また政府や地方自治体は自らも率先して環境管理システムの構築に取り組むべきである。さらに、企業の環境管理システム構築の支援の受け皿づくりや金融機関によるエコ・ファイナンス(環境関連融資)の積極的取り組みが必要だといえよう。
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