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Business & Economic Review 1999年01月号

【論文】
99年度わが国経済見通し-戦後最大の危機からの脱出

1998年12月25日 調査部


要約

わが国経済は戦後最悪の不況に直面している。とりわけ、98年夏場には長銀の経営危機問題が金融システム危機を再燃させる一方、ロシア経済危機勃発により世界的なデフレ懸念が拡大。このもとで、日本経済は、信用収縮と実体経済が相互作用的に悪化する「恐慌型スパイラル」が始まるギリギリの局面に。こうした危機的状況に対し、10月中旬には公的資金60兆円を伴う金融安定化スキームが整備され、これに沿って大手行は相当規模の資本注入の申請を行う方針。さらに、11月16日には総事業規模23兆円を超える「緊急経済対策」が発表され、これらを踏まえれば、最悪の事態の発生は当面回避される見通し。

しかし、以下の事情を勘案すると、わが国経済が危機的局面から完全に脱却できたとみるのは早計。
・ しかし、以下の事情を勘案すると、わが国経済が危機的局面から完全に脱却できたとみるのは早計。
・ 企業の設備・雇用調整姿勢の強まり…デフレ基調が持続するもとで企業業績は厳しく、さらに経営効率の国際水準への引き上げ圧力が強まるなか、設備投資・雇用の削減姿勢が一段と強まる見通し。
・ 生活不安を背景とする家計行動の慎重化…リストラに伴う雇用不安の高まり、年金改革の先送りによる老後不安の強まりを背景に、家計の生活防衛姿勢が強まる方向。
・ 世界的な景気減速・信用収縮の強まり…ヘッジファンドの損失拡大に伴う米銀の不良債権増大、中南米などエマージングマーケット危機の再燃、等を契機に世界的な信用収縮・景気悪化のスパイラルが発生するリスクあり。
以上を踏まえれば、99年前半にかけて景気のスパイラル的な悪化に歯止めがかかることは予想されるものの、後退局面は脱せず、緊急経済対策の効果が一巡する下期以降は再び景気のダウンサイドリスクが高まる方向。この結果、99年度は3連続のマイナス成長となる可能性大。

バブル崩壊後8年を経過してもなお、わが国経済はその後遺症から脱却できず、混迷は深まる一途。その原因は(1)不良債権処理の先送りがもたらす金融システムの不安定化と(2)各種構造改革の先送りを背景とする家計・企業に広がる閉塞感の2点。このうち、金融システムの不安定化については、公的資金60兆円を伴う金融安定化スキームが整備され、とりあえず小康状態。しかし、構造改革を先送りする限り消費・投資活動の低迷は続き、不良債権処理を進めても景気悪化に歯止めはかからず、再び不良債権が増えて、金融システム危機と実体経済悪化の悪循環からわが国経済は永遠に脱出できず。

わが国経済再生のためには、新たな成長セクター創出につながる抜本的構造改革の断行は不可欠。しかし、構造改革を断行した場合、ダイナミズムを喪失した現下のわが国経済がその調整コストに耐え切れず、縮小均衡メカニズムの増幅により壊滅的打撃を被る懸念を否定できず。このようにみると、構造改革の断行とともに、縮小均衡メカニズムを遮断する強力な対策を打ち出すことは喫緊の課題。バラマキ型公共事業追加等、従来型の景気対策ではなく、強力な景気浮揚効果を持つとともに望ましい経済・産業構造転換を促進するような対策―「日本経済再生トータルプラン」―を策定・断行すべき。具体的は、(1)10兆円規模の構造改革誘導型減税の実施、(2)新産業につながる未来型社会資本の重点整備、(3)規制撤廃・公的セクター改革等を通じたサプライサイド強化策、の3つを盛り込んだうえで、強力な政治のリーダシップによって改革を断する以外に危機脱出の道はない。
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