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Business & Economic Review 2000年04月号

【特別論考】
金融機関のパフォーマンス計測-一つの統合リスク管理アプローチ

2000年03月25日 トーマス・ホー・カンパニー社長 トーマスS.Y.ホー、専務取締役 小西湛夫


要約

Japan Research Review本年3月号において「BIS規制の超克―わが国金融機関が目指すべきもの― 」と題し、ITとリスク管理技術を武器とした国際的銀行の二極分化と、それを結果的に加速させるBIS規制の問題を指摘した。また、わが国やアジア、ロシアでの金融危機を経験し、これまでのリスク・テクノロジーの限界が露呈されたことにも触れ、同時に金融と保険というリスク管理の二大潮流が融合に向かっている現実を概観した。更に、BISや先進金融機関が、これまでの定量化への傾斜から、定性的リスク管理手法との統合を模索している現状にも触れた。最後にそのような指向に応えようとする一つの「リスク工学」モデルとして、「プロセス・エンジニアリング」の概要を紹介した。本論考は、この「プロセス・エンジニアリング」を、単純化したモデルで解説しようとするものである。

銀行や保険会社といった金融機関のリスク管理は、リスクの計測から始まる。しかし、バリュー・アット・リスク(VaR)やアーニング・アット・リスク(EaR)その他のリスク尺度はバランス・シートの損失可能性や企業収益、その他の集約された財務計数の測定に焦点を当てるものにすぎず、金融機関の基本的な機能を十分認識してはいない。

金融機関の経済学とは、「リスク変換(トランスフォーム)」のプロセスである。つまり、貸金やその他の金融商品のリスクを取り、市場リスクや信用リスクに曝されながら、株主のリスク嗜好を充たすようにこれらのリスクを変換していくプロセスである。金融機関のリスク管理は、このリスク変換のプロセスを理解することから始めなければならない。

本論考の目的は、金融機関の機能をプロセスとしてどのようにモデル化するかを単純化して示すことである。金融機関内の種々のグループや部門を一つのプロセスで結び付けることで、各グループがリスク変換や企業の付加価値をもたらすために、各々の役割を果たしていることを示す。

まず金融機関のビジネス・プロセスにおける四つのサイクル局面を説明し、単純化した財務方程式モデルを提示する。次にベンチマークを用いることで、各サイクル局面に責任を持つ部門のパフォーマンスと、金融機関全体のパフォーマンスが計測できることを示す。

このモデルが、一貫性ある分析手法ですべてのグループのリスクを計測できることを証明するとともに、このプロセス中の諸々のリスクを測定し、管理するために、パフォーマンス計測をどのように用いればよいかも示す。
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