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Business & Economic Review 2001年02月号

【論文】
新年世界経済の展望-アメリカの景気減速で世界経済はどうなるか

2001年01月25日 調査部


要約

2000年の世界経済を振り返ると、総じて同時好況を達成したといえるが、その牽引役を担ったのは、前年に引き続きアメリカであった。アメリカ経済は、2000年を通じて徐々に成長速度を下げつつも、なお底堅い景気拡大を維持し、世界の輸出を吸収し続けた。

2001年を展望しても、この構図に基本的に変化はないとみられ、とりわけ、日本および東アジア諸国は、アメリカを中心とする外需への依存を続けざるを得ないであろう。まず、日本では、財政赤字の膨張を背景に、もはや財政発動の余地が限られるなか、民間需要に関しては依然外需頼みを脱しきれていない。一方、東アジアでは、構造改革の遅れや政情不安などが嫌気されて金融・為替市場が不安定化しており、IT関連製品輸出の好調によって、かろうじて景気回復を続けている状況にある。

ところが、アメリカでは、株式相場がハイテク株を中心に調整局面にあり、株式市場と実体経済の悪化が負の循環を引き起こすとの懸念が急速に強まっている。その意味で、2001年の世界経済における最大のリスク・ファクターはアメリカ経済といえよう。

確かに、90年代半ば以降のアメリカ経済の好調には、株価の上昇が大きく寄与してきたことから、株安によって景気が押し下げられる事態は避けられない。もっとも、金融・財政両面からの機動的・弾力的な政策発動などが下支えとなって、景気がスパイラル的に悪化する公算は小さい。ただし、ソフトランディングという言葉からイメージされるほど、景気が滑らかに減速していくとみるのはあまりに楽観的であり、さまざまな混乱を伴いながら、結果として失速を免れる、という姿のほうが現実的であろう。

一方、ユーロ圏経済は、通貨統合に伴い域内関係が一段と緊密化していることから、統合以前と比較すれば海外経済の動向に左右されにくくなっている。そのうえ、2001年には主要国で大型減税が実施される計画であり、それによる景気刺激効果が期待できる。

問題となるのは、日本および東アジア地域であろう。これらの国・地域は景気回復の基盤が脆弱なだけに、アメリカ発の混乱を乗り切れるか否か懸念が大きく、アメリカ以上に下振れリスクがあることに留意する必要があろう。
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