Sohatsu Eyes
CSRは総論から各論へ
2003年12月24日 萩原 美穂
2003年は、経済同友会の第15回企業白書『「市場の進化」と社会的責任経営』に代表されるように、企業の社会的責任(CSR)の概念について産業界で本格的な議論が開始された年でした。
また、リコーやソニーを先陣として、様々な企業でCSRの専任部署やワーキンググループが設置され、「日本のCSR元年」とも言われた年でした。来たる2004年は、わが国のCSRが概念の議論から実践と試行の段階へと発展する年となるはずです。
CSRの実践と試行とは、企業活動のあらゆる側面をCSRの視点から捉えなおし、従来の活動の再編成や抜本的な改革を行っていくものです。その一貫として一部の企業が取り組み始めているのが、社会貢献活動の再定義です。
従来、社会貢献活動は「企業に課せられた社会への利益還元(メセナやフィランソロピー)」と捉えられてきましたが、今日、社会貢献活動により積極的な意義付けを行う動きが欧米の先進企業の間で加速しています。
すなわち、第一に、「健全な社会の発展に寄与することで企業が長期的なベネフィットを得る」という“社会と企業の共進化”の視点、第二に、「ブランド形成、従業員の士気向上、顧客のロイアリティー獲得などを通じて企業が直接的なベネフィットを得る」という“企業の競争優位構築”の視点です。
社会貢献活動の再定義を行う上では、このように社会貢献活動に三つの視点があることを認識した上で、自社がいずれの視点を重要視しているのか、どのようなことを最終的な目的・目標として活動を展開していくのかを再整理し、社会貢献活動の基本理念を明確化する必要があります。
次に、その目的・目標をより具体的な要素に落とし込む作業を行います。そして、その要素を達成するために、自社の持つ資源・強みを活かしてどのような切り口から取り組むことが効率的かつ効果的であるかを検討し、従来の社会貢献プログラムの見直しや新たなプログラムの方向性を決定します。
こうして理念を明確にした社会貢献活動の再定義を行うことにより、短期的・長期的な社会貢献活動のパフォーマンス(効果)を検証・評価することが可能になります。
2004年、CSRは総論から各論へ。
その実践と試行に果敢に取り組んでいきたいと思います。
CSRアーカイブス: http://www.csrjapan.jp
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

