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コラム「研究員のココロ」

「デットIR」で資金調達を有利に導け!

2004年09月27日 手塚貞治


 昨今、「デットIR」という言葉がよく聞かれるようになっている。通常のIR(インベスター・リレーションズ)が株主に対して行うものであるのに対し、デットIRとは債権者(金融機関、社債投資家等)に対して行うIR活動のことである。2つを区別する意味で、債権者向けの「デットIR(Debt IR)」に対し、従来の株主向けIRを「エクイティIR(Equity IR)」と呼ぶことが増えてきた。
 しかし、なぜ今「デットIR」が脚光を浴びるようになったのだろうか?それは、借り手側である企業と貸し手側の金融機関との関係性が大きく変化したことによる。従来、メインバンク制や株式の持ち合いによって、企業は金融機関ときわめて密接な関係を築いてきた。資金調達は、メインバンクに頼み込むことによって「なんとかなる」ものであった。しかし時代は変わった。不良債権に苦しんだ金融機関の側は、貸出債権の精査をよりシビアにせざるをえなくなった。企業と金融機関の関係も、よりビジネスライクな方向に進んでいる。換言すれば、銀行融資が従来の相対型取引から市場型取引へ移行しつつあるのだ。

 この状況変化に対して「金融機関が冷たくなった」と考えるのはお門違いである。リスクに応じたリターンを求めるのは世の事業活動として当然のことであり、ある意味、金融取引がよりまっとうになったというほうが正しい。
 この状況変化において重要となるのが、「デットIR」である。従来の相対型取引の時代には、担保物件と決算書を用意すれば事が足りた。つまり「過去」の実績を提示すればよかったのだ。しかし今は違う。「将来」の見込みが求められる。つまりは事業計画である。第三者が納得できる形で事業計画を作りこみ、それを金融機関に説明して回ることが必要なのである。
 こうしたデットIRは、多数の金融機関が参加するシンジケートローンでの調達の際には特に重要となる。借り手企業はより包括的な情報開示をすることが求められる。具体的には、企業の事業内容、業界動向、財務状況、経営戦略、投資計画などといった内容である。企業は、多数行が一同に介するバンクミーティングなどの場で上記の内容を説明し、信用力を正確に理解してもらうという行為を行うことになる。

 エクイティIR(株主向けIR)でアピールするのが成長性であるのに対し、デットIRは安定性をアピールするという色合いの相違はあるものの、企業の中長期的な方向性を明示するという意味で、根本的には同じ目的の行為なのである。
 こうしたデットIRを、決して面倒な作業ととらえてはならない。それどころか、チャンス到来ととらえるべきである。デットIRをうまく実行すれば、金融機関からの信頼を勝ち取ることができる。資金調達余力の拡大や負債コストの低減など、実務的効果も狙えるのである。つまり、借り手企業の側に資金調達を有利にする裁量の余地が与えられたことになる。
 このようにデットIRとは、資金調達を有利に導くことができる手法なのである。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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