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Business & Economic Review 2009年12月号

【特集1 財政緊縮下における自治体の公営企業改革】
公営バス事業の抜本的な改革の必要性

2009年11月25日 松村憲一


要約

  1. 公営バス事業は政令指定都市や関西の近郊都市、西日本での中規模都市を中心として、38都市において運営されている。各都市に公営バス事業が導入・拡張された背景としては、戦後すぐの時期に民間で十分にバスサービスが供給されてこなかったこと、昭和40年代前後に各都市の路面電車が廃止され、代替手段として運行されたことなどが挙げられる。
  2. 各公営バス事業者とも、輸送人員の減少による運賃収入の減少や一般会計からの補助の削減により事業収益が伸び悩む一方、民間と比較して高い人件費を中心にコスト削減が進まず、慢性的に赤字体質となっているケースが多い。
  3. 厳しい経営状況に対して、各事業者では経営改善計画を策定して、経営合理化を推進してきた。一部の路線・営業エリアを民間事業者に管理運営委託するケースが増えているほか、札幌市や函館市、秋田市、岐阜市、三原市、姫路市などでは、民間事業者へ路線を移譲し、市がバス事業から撤退する動きもある。
  4. 現状では、高い職員人件費の見直しやサービスの抜本的な改善・改革などについて不十分な面もある。公営バス事業を今後とも継続していくためには、民間事業者並みの人件費水準に適正化するなどコスト構造を転換していくことが必要不可欠である。
  5. 公営企業体自らでの改革が困難な場合は、可能な限り民間移譲を進めていくべきである。現時点では資金不足に陥っていない公営企業においても、早晩経営危機が到来する可能性がある。従来ならば、先送り、延命されてきたような事業に対しても、現時点で抜本的な対策を検討していく必要がある。
  6. 早急な民間移譲が困難であり、段階的に進めざるを得ない場合には、引き続き、経費削減等の経営改善を進めるとともに、需要発掘への取組みや市の交通政策に積極的に関与していくなど、経営マインドを伴った能動的な事業展開が求められる。
  7. 路線ごとの収支を「見える化」し、経営状況について徹底的に情報公開を進めることによって、本当に必要なサービスなのか、税金による補填をしてまで維持すべきなのか、などを広く問題提起していくべきである。また、採算性の明確な基準を整え、路線再編等についてスピード感をもって取り組むなど、改革・改善を加速する必要がある。
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