Economist Column No.2026-067
副首都の指定要件案が公表 ― より重要なのは今後の制度設計 ―
2026年10月07日 若林厚仁
10月2日、副首都の指定要件案が政府から公表された。副首都は道府県単位で指定され、今回公表された要件の数値基準だけで単純に考えれば、候補地は北海道、愛知県、大阪府、福岡県の4道府県となり、副首都指定に意欲を見せていた宮城県、群馬県、広島県などは対象外となった。本稿では今回の指定要件案について改めて確認したい。
■行政・人口・経済面について数値基準案を公表
7月に成立・公布された副首都法(正式名称は「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」)において、人口や経済規模などの要件項目は既に示されていたが、今回の指定要件案では各要件の数値基準などが新たに示された。具体的には、①【立地】首都直下地震緊急対策区域と富士山の火山災害警戒地域のいずれにも該当しない地域、②【行政】地方支分部局が14以上設置されている市町村(を有する道府県)、③【人口】国内総人口に対する指定都市人口の割合が1.2%以上の指定都市(を有する道府県)、④【経済】国内総生産に対する道府県内総生産の割合が2.1%以上の道府県、となっている。
■数値基準の根拠は明確ではないものの、副首都候補として4道府県は妥当
①・②は、主に首都中枢機能のバックアップに向けた要件である。①については、副首都法で「東京圏との同時被災の可能性が低いもの」という項目を定めていたことから、改めて埼玉、千葉、神奈川などは対象外ということが示されたと言える。②については、国税局や経済産業局などの地方支分部局は25~30種類あることから、その半分程度が目安になっていると考えられる。地方支分部局の明確な定義は示されていないものの、5市(札幌・仙台・名古屋・大阪・福岡)が基準を充足できるとみられる。
③・④は主に多極分散型経済圏の形成に向けた要件である。③については、国内総人口の1.2%は約150万人となり、現時点で充足しているのは東京圏以外の指定都市15市のうち4市(大阪・名古屋・札幌・福岡)、わずかに下回るのが2市(神戸・京都)となっている(並びは人口規模順)。広島市や仙台市は人口110~120万人程度で届かず、群馬県にはそもそも指定都市がない。④については、国内総生産の100%を47都道府県で割ると2.1%であり、平均以上の県内総生産が条件になっていると考えられる。直近の県民経済計算を基に計算すると、2.1%を上回る東京圏外の道府県は7府県(大阪・愛知・兵庫・北海道・福岡・静岡・茨城)となる(総生産順)。なお、広島県は2.094%とわずかに下回る。
上記の基準を踏まえると、北海道、愛知県、大阪府、福岡県が候補地となる見込みである。これらの道府県は今回の指定要件案が公表される以前から、道府県と指定都市が連携して専門組織を立ち上げ、地方創生担当相と面会するなど、行政が積極的に動いていた。数値基準の根拠は明確ではないものの、有事のバックアップ能力と平時の経済けん引力、行政の積極姿勢などを総合的に勘案すると、上記の4道府県は副首都候補として概ね妥当であると言える。
■最終的な副首都指定に向け、より具体的な制度設計が望まれる
上記の指定要件は、いわばエントリー要件であり、最終的な副首都の指定にはより詳細な検討が必要となる。例えば、有事の際のバックアップでは地方支分部局数だけでなく、交通・通信・電力などのインフラの強靱性や代替性も評価する必要があるほか、民間企業のBCP(事業継続計画)策定状況も重要である。平時においても、多極分散型経済圏の形成に向けてどのような法制・財政・税制上の措置などを講じる必要があるか、各候補地の実情に照らし合わせて検討する必要がある。また、複数の副首都指定を考えているという趣旨の政治的発言もあり、その場合、副首都ごとに制度設計をする必要がある。
今後、11月に副首都の機能などを定める「基本方針の考え方」、2027年10月までに施策を推進するための「基本方針」が公表される予定である。様々な要因を背景に、2027年10月の期限を待たずに基本方針が公表される可能性もあるが、拙速を避け、より具体的な制度設計に向けて十分な議論が行われることが望まれる。
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