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JRIレビュー Vol.7, No.134

世界経済見通し

2026年07月31日 若林厚仁


世界経済は底堅い成長が続く見通しである。本年2月以降のアメリカとイランの軍事衝突を受けて景気下振れ懸念が高まったものの、6月に両国の間で暫定合意が成立したことで、中東情勢は鎮静化に向かうことが期待される。ホルムズ海峡経由の輸送正常化を前提とすれば、2026年の世界経済は3%をやや上回る成長を維持できる見通しである。もっとも、アメリカ・イランが最終合意に至るかは予断を許さず、ホルムズ海峡の輸送障害や原油価格の再上昇が生じた場合には、成長率が2%台後半まで低下する可能性がある。中東リスクは依然として世界経済の主要な下振れ要因である。

中東情勢が不安定な状況下においても世界経済が底堅さを維持している要因として、第一に、トランプ政権下の関税政策の影響が当初想定よりも小さかったことが挙げられる。制度上の実効関税率は大幅に上昇したものの、企業による輸入先変更や迂回貿易、代替品への切り替え、適用除外措置などによって輸入者の実際の負担は抑制されている。足元では新たな関税体系の検討が進められているものの、現時点では世界経済への追加的な下押し圧力は限定的とみられる。

第二の要因は、AIを中心とした投資の急拡大である。アメリカのビッグテックによるデータセンター投資の急増を背景に、半導体需要は歴史的な高水準に達しており、世界の貿易拡大の大部分をAI関連製品が占める状況となっている。AI投資は実体経済だけでなく、金融市場にも大きな影響を及ぼし、半導体関連株の急上昇や資産効果を通じて個人消費を押し上げている。AIが雇用を奪うとの懸念もあるが、現時点ではむしろAI関連業種の求人が増加しており、世界経済は「AIによる代替フェーズ」ではなく「AI導入フェーズ」にあるとみられる。

第三の要因は、緩和的な金融・財政政策である。主要国ではインフレ圧力が残るなかでも、実質政策金利が低下基調にあり、信用市場でも企業の資金調達環境は良好な状態が続いている。また、アメリカや中国を中心とした積極財政や世界的な防衛支出拡大も景気を下支えしている。しかし、中期的視点では、財政赤字の拡大が続くなか、財政持続性への懸念や長期金利上昇による投資抑制のリスクが膨らむため、積極財政と財政健全化のバランスが各国において重要な課題となる。

中長期的なリスクとしてとくに重要なのが、地経学的分断(ジオエコノミック・フラグメンテーション)とAI投資の調整である。安全保障を優先する動きの強まりにより、人材・貿易・投資・技術の交流が阻害されることで、生産性や潜在成長率が大幅に低下する可能性が高まっている。また、AI関連投資では、巨額のデータセンター投資を支えている需要の多くがビッグテックや新興AI企業によるものである。AIサービスの収益化が想定ほど進まなければ、設備投資の縮小や株価調整を通じて世界経済を下押しする可能性がある。今後は「地経学的分断」と「AI投資」という二つの構造変化が世界経済にどのような影響を及ぼし得るか、細心の注意を払う必要がある。


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