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Economist Column No.2026-032

問われる地方創生臨時交付金のあり方

2026年06月19日 立岡健二郎


◾️自治体に多額の交付金。使途の自由度の高さが特徴
6月5日、令和8年度補正予算が成立した。予算規模は3.1兆円にのぼるが、中東情勢の緊迫化など不測の事態への備えとして計上された予備費が全体の9割以上を占めるという、やや異例の内容となっている。
予備費以外で唯一盛り込まれた歳出項目が、1,000億円の「重点支援地方交付金」である。これは、物価高騰の影響を受ける生活者や事業者を支援するために自治体に交付されるものである。もともとこの交付金は、こうした支援を通じて地域経済を下支えし、地方創生につなげることが期待されており、「地方創生臨時交付金」の一部に位置付けられている。
地方創生臨時交付金は、2020年度に新型コロナウイルス感染症への対応策として創設された。その後、感染状況が落ち着く一方で物価上昇が進んだことから、2023年度以降は物価高対策へと主眼が移っている。これまで補正予算や予備費を通じて累次にわたり措置され、累計交付額は25兆円に及ぶ。
同交付金の大きな特徴は、「地域の実情に応じた」事業を実施できるよう、自治体に具体的な使途について広い裁量を認めている点にある。公共事業などのハード事業に比べ、地域ごとの課題にきめ細かい対応が必要なソフト事業の重要性が高まっているなか、自治体の自由度を広げることには一定の意義がある。

◾️制度の意義や財源転用などに課題、求められる制度の見直し
もっとも、地方創生臨時交付金には看過できない課題もある。第一に、制度の意義に疑問が残る。とりわけ重点支援地方交付金が対象とする物価上昇は、基本的には全国に共通するマクロ経済的な現象である。その影響の程度に一定の地域差はあるとしても、自治体ごとに大きく異なる問題とは言いがたい。物価高対策は自治体に委ねるよりも、国が前面に立ち、給付金や税制措置など統一的な支援を実施するほうが理に適っているのではないか。
第二に、交付金が所期の目的とは異なる財源に実質的に転用されている可能性が高い。使途の自由度が高いため、自治体は、それまで自らの財源で実施してきた独自事業などにも交付金を充当することができる。交付金を既存事業に充てれば、その分、一般財源に余裕が生じる。こうして生じた資金の一部が、自治体の貯金ともいわれる基金の積み立てに回っていると考えられる。実際、地方創生臨時交付金の交付開始後、自治体の基金残高は大きく増加している。人口規模の小さい自治体などでは、交付額が手厚く配分されており、実際の資金需要に比べて過大であった可能性もある。
コロナ禍という非常時に創設された地方創生臨時交付金は、累次の補正予算などを通じて巨額に膨らんできた。しかし、物価高対策への活用が中心となった現在、その役割や存在意義はあいまいになりつつある。制度を漫然と継続するのではなく、その必要性そのものを改めて検証すべき時期に来ている。また、今後、使途の自由度の高い交付金を設ける場合があっても、それが既存事業ではなく目的に沿った事業に適切に充当されるような制度設計に改める必要がある。


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