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Economist Column No.2025-064

2025年の日本株市場、最高値更新ともうひとつの注目点

2025年12月23日 谷口栄治


日経平均株価は5万円を突破
2025年のわが国株式市場を振り返れば、10月に日経平均株価は初めて5万円を突破し、11月には52,636.87円の最高値を記録したことが大きな話題となった。米国のAIブームを受けたAI関連株や半導体株の急騰、円安による輸出企業の業績改善期待、高市政権への期待感、さらには日本企業のコーポレートガバナンス改革に対する海外投資家からの評価等が上昇局面を下支えした。日本株市場は世界的な株高の潮流に取り残されることなく、さらなる上昇が展望できる環境となっている。

価格変動幅(レンジ)も過去最大に
一方、年間の最高値と最安値との値幅、すなわち変動幅(レンジ)が過去最大になったことももうひとつの注目点である。具体的に、日経平均株価は、本年4月にトランプ関税による「相互関税」の発表を受けて一時30,792.74円まで下落したが、その後52,636.87円まで上昇した。その両者の差(変動幅)は実に21,844円となり、バブル崩壊による影響が直撃した1990年の19,169円(最高値:38,951円、最安値:19,782円)を35年ぶりに更新することとなった。このようなボラティリティの増大は、経済・金融・財政政策の不確実性、不透明性、不安定性を映し出したものであるほか、取引実務の観点からは、高頻度取引(High Frequency Trade)が価格変動を増幅した影響も存在する。

2026年もボラティリティの激しい展開は継続
2026年の株式市場についても、価格変動をもたらした要因は構造的なもので、ボラティリティの激しい状況は継続すると見ておくべきだろう。2025年の株価変動の最大の要因は、トランプ政権の政策運営であり、同盟国を含めた諸外国に対する関税引き上げ、中央銀行の独立性を無視した利下げ圧力、場当たり的とも評される外交政策など、従来の経済政策のセオリーから逸脱した政策運営が金融市場を翻弄した。2026年もトランプ氏の言動が市場を左右する可能性は高く、なかでも金融政策については、トランプ氏が指名した人物がFRB議長になることで緩和的な姿勢が強まると想定される。金融緩和は株式市場にポジティブにはたらく一方、同時にAIバブルの過熱やノンバンク関連の信用リスクの蓄積など、資産価格の歪みや金融システム不安に対する警戒度を高める要因となる。国内に目を移せば、「金利のある世界」が本格化し、円安も進行している。「責任ある積極財政」は株式市場から一定の評価を得ているが、円安、金利高が株価上昇の足かせとなるリスクも懸念される。こうした環境下では、2025年と同様、1日の取引で、千円単位の変動(増減)がみられることもあるだろう。

日々の株価変動に一喜一憂しない姿勢が必要に
ボラティリティの高い展開で、投資家が短期的な値動きに過度に反応することは望ましくない。とりわけ、つみたてNISAを活用する若年層や現役世代においては、長期的な資産形成の視点から、日々の株価動向に一喜一憂しない姿勢が求められる。
資産形成の最終的な目的は、個々人のフィナンシャル・ウェルビーイングの達成にある。2026年に向けては、株価のボラティリティが継続することを前提に、冷静に長期・分散をベースとする資産運用を行うことを心掛けることが肝要となる。金融当局や金融機関からの適切な情報提供と呼びかけ、投資教育の強化も、過度なリスクテイクやパニック的な売買を抑制するうえで重要となる。新NISAの普及によって、投資がより身近となる今こそ、日々の値動きに翻弄されるのではなく、企業やセクターの中長期的な成長性や収益性に着目した投資姿勢を定着させることが重要である。2026年は、その理解が一層深まり、健全な資産形成文化が広がる一年となることを期待したい。


※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。
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