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ビューポイント No.2025-016

携帯電話事業者による金融事業参入と今後の注目点

2025年08月21日 谷口栄治


1990年代後半の規制緩和を受けて、異業種による金融事業参入が進展。なかでも、足元では、国内大手携帯電話事業者(NTT ドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天)が、グループ内で、銀行、証券、決済といった金融業に本格参入。

携帯電話事業者による金融事業参入については、①規制緩和後に設立された新興系のネット銀行やネット証券等の買収により、早期に事業を立ち上げている、②モバイル端末を活用した決済サービス(モバイル決済)を起点としている、といった特徴あり。

こうした金融事業参入の背景にあるのが、国内通信市場の成長鈍化。わが国では、既にモバイル端末保有率がほぼ100%あるほか、格安料金プランの導入により、ARPU(1契約あたりの月間売上高)も伸び悩み。携帯電話事業者は、収益源の多様化に向けて、金融事業をはじめとする非通信事業を強化。

今後、わが国における「通信と金融の融合」の推進にあたっては、これらの動きを通じて社会的価値を極大化するとともに、新たに生じるリスクを極小化する必要あり。そのような観点を踏まえ、今後の注目点は以下の通り。

① 事業者としての視点:顧客に対する付加価値の高いサービスの提供
携帯電話事業者としては、付加価値の高い金融商品・サービスの提供を通じて、顧客満足度を高め、ARPU を引き上げていくことが肝要。携帯電話事業者による金融事業のクオリティを高め、顧客基盤の強化(囲い込み)ができるか要注視。

② 金融当局としての視点:プレゼンス拡大を踏まえたイコールフッティングの確保
携帯電話事業者傘下の金融機関のプレゼンスが高まるなか、態勢整備面でのイコールフッティングを確保する必要あり。とりわけ、マネーロンダリング対策やサイバーセキュリティなど、金融インフラの担い手として、リスク管理やガバナンスの強化が不可欠。また、グループ内における金融事業と非金融事業(携帯電話事業を含む)との間のリスクの遮断等を企図して、事業会社による金融事業に対する規制・監督の強化など、規制・監督面でのイコールフッティングも中長期的な課題に。


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