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リサーチ・レポート No.2025-008

高額療養費制度を巡る政策のあり方 ―必要な医療へのアクセス確保と非効率な医療の抑制の両立に向けてー

2025年07月31日 成瀬道紀


政府は、公的医療保険の患者自己負担に上限を設ける高額療養費制度の自己負担限度額を引き上げる方針を示したが、患者団体などの反対を受けて一旦凍結し、本年秋までに再検討のうえ結論を得るとしている。本稿は、高額療養費制度の現状と課題を整理し、①必要な医療へのアクセス確保と、②非効率な医療の抑制の両立を図る観点から、あるべき政策を考察する。

わが国の高額療養費制度を巡る問題点として、大きく三つ指摘できる。第 1 に、医療保険制度のなかで供給側を統制する仕組みが乏しいため、高額療養費制度によって患者の自己負担が一定額に達しそれ以上ほとんど増えない状態になると、非効率な医療の利用に歯止めがかかりにくい。実際、効果は他の薬と同等と考えられるが価格だけ高い抗癌剤の使用など非効率な医療が行われている。第 2 に、年齢や入院・外来の別など、患者の負担能力と無関係な要因で自己負担限度額に差が設けられている。具体的には、70 歳以上の患者の外来の医療費について相対的に自己負担限度額が低く定められている。このため、頻回受診・多剤投与・ホスピス型住宅への過剰な訪問看護など、とりわけ高齢者の外来医療の分野で非効率な医療の利用が目立つ。第 3 に、医療費と自己負担限度額の計算基準が月単位であり、継続的に高額な医療を必要とする患者の負担が過重となりやすい。

以上を踏まえ、求められる政策は次の通りである。第 1 に、非効率な医療を抑制するための医療保険制度そのものの改革である。具体的には、保険給付対象とする薬の限定、費用対効果を重視した診療ガイドラインの整備、および、それを遵守させるための病院や診療所へのモニタリングや診療報酬上の評価などである。第 2 に、高額療養費制度において年齢や入院・外来の別による自己負担限度額の差を撤廃する。第 3 に、高額療養費制度における医療費と自己負担限度額の計算基準を月単位から年単位に変更する。その際、患者にコストを節約するインセンティブを持たせる観点から、年間の医療費が増えると必ず自己負担が増える体系とする。


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