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JRIレビュー Vol.7, No.125

世界経済見通し

2025年07月31日 若林厚仁


足元の世界経済は持ち直している。コロナ禍からの景気回復で顕在化した深刻な人手不足が緩和するなか、賃金は物価上昇率を上回るペースで増加するなど、雇用・所得環境は改善方向にある。これを受けて、消費も増加基調で推移している。アメリカの消費がトランプ関税を巡る先行き不透明感を映じて鈍化しているものの、大きく崩れるには至っていない。業種別では、各国でインバウンド需要がコロナ禍前の水準まで回復するなど、サービス業が好調な推移を続けている。

一方で、製造業は国・地域で二極化している。アメリカでは半導体製造拠点の設立などにより設備投資・生産とも堅調である。一方、中国では内需低迷や米中対立を背景に設備投資が伸び悩んでいるが、供給能力はなお過剰で、輸出単価を切り下げたデフレ輸出が拡大している。日本や欧州先進国では、コスト削減を目的とした生産拠点の海外移転などを背景に、自国・地域内では設備投資・生産とも低迷が続いている。

先行きの世界経済は減速する見通しである。4月にトランプ政権が公表した相互関税が世界経済を大きく下押しすることで、世界経済の実質成長率は2025年から2026年にかけて3%近傍に低下する見通しである。今回の見通しでは、相互関税の上乗せ分の発動は見送られることを前提としており、この場合、アメリカではインフレ率が関税影響で一時的に上がるものの2026年にかけて低下し、2025年後半から利下げを再開する見通しである。

上記標準シナリオに対するリスクとして、トランプ関税の税率引き上げが挙げられる。相互関税の上乗せ部分がすべて発動された場合、世界貿易量の減少に加え、不確実性の増大による消費手控えや設備投資の見送り、金融市場の混乱などにより、世界経済の成長率は2%前後まで大きく低下する可能性もある。

トランプ政権の保護主義は、世界的にコスト上昇や過剰投資による生産性の低下を招く。また、自国第一主義の姿勢が各国との関係性にも変化をもたらしている。世界の製造業が生み出す付加価値のうちアメリカで最終消費される割合は2割程度にとどまるほか、EUとCPTPP加盟国の経済規模はアメリカを上回る。中長期的にはアメリカを極力介しないかたちでの経済連携が進む可能性もある。


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