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Economist Column No.2025-020

全世代型社会保障の構築の本丸は国民負担改革

2025年06月16日 蜂屋勝弘


■全世代型社会保障の構築
今後の人口減少社会、高齢化社会における社会保障あり方として、「お年寄りだけではなく、子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで広く安心を支えていく」(注)全世代型社会保障の構築が目指されている。こうした給付面での取り組みに加え、「現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直す」(注)ことも、全世代型社会保障に向けた改革の一環であり、今般の「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)でも、「現役世代の負担を軽減しつつ」との文言が添えられている。

■国民負担は若い世代に偏在
実際、国民負担の内訳をみると、わが国では、個人所得税と社会保険料の合計額の割合が58%(2021年)とOECD平均の51%よりも高く、消費課税の割合が21%とOECD平均の32%よりも低い。基本的に、個人所得税と社会保険料は主に若い世代が負担し、消費課税は高齢者も多く負担することや、わが国の高齢化が諸外国に比べて進んでいることを勘案すると、わが国は、諸外国と比べて、若い世代が国民負担の多くを負担し、高齢世代を支えている社会だと言える。

■重要となる国民負担の比重の高齢世代へのシフト
今後の中長期的な人口動態として、国民負担の主な担い手である若い世代が減り、社会保障の主な対象である高齢世代が増えることを踏まえると、国民負担のあり方についても再構築が求められる。高齢世代が多くの金融資産を有していることを勘案すると、高齢世代内での支え合いや、高齢世代が次世代を支えるとの構図をこれまで以上に強く打ち出し、国民負担の比重を少しでも高齢世代にシフトさせることが重要となる。
今般の年金改革では、基礎年金の給付水準が引き上げられることになった。これにより結果的に、現在の高齢世代の年金額が減り、氷河期世代などの現役世代が将来受け取る年金額が増えるため、高齢世代から若い世代への所得再分配との見方も出来る。もっとも、給付水準の引き上げに伴って増加する公費負担分の財源手当ての方策は、決まっていない。これについては、低所得層の年金額を引き上げるという改革の趣旨に照らすと、公的年金等控除の縮小や資産課税の強化等によって高齢の富裕層に負担を求めるのが妥当であろう。

(注)全世代型社会保障改革の方針(令和2年12月15日閣議決定)



※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。
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